1973年に発表されたカーペンターズの5作目「ナウ・アンド・ゼン」の3ツ折ジャケット(アナログレコード時代ならではの産物。CDでは絶対に実現不可能な逸品)はフェラーリ365GTB/4に乗ったリチャードとカレンのカーペンター兄弟のバックにアメリカの平均的な家(僕の記憶だと2人が育ったカリフォルニアの家だと思う)が描かれた、本当に平和な情景のイラストレーション。レコードを入れた中袋には「シング」から「イエスタデイ・ワンス・モア / リプライズ」までの収録曲の歌詞と一緒に、50年代と60年代の名車の写真がレイアウトされていたが、80年代の終わり近くリチャードと一緒にに仕事をした時、フランシス・コッポラ監督が作った映画「タッカー」の話で盛り上がり「オールディーズものの好みが合うのもびっくりしたけど、車もそうなんだな。じゃあおもしろい場所に案内してあげるよ」と誘われて行った巨大なガレージに写真や映画でしか見たことがない名車がざっと40台近く並んでいたのには、夢を見ているんだろうかと思うくらいびっくりさせられた。
おまけにその巨大なガレージの壁に貼りつけられていたプレートには”YESTERDAY ONCE MORE” の文字。カーペンターズを世に送り出したA&Mレコードの創始者であるハーブ・アルパートが「リチャードはカレンの声をどのような織物で包めばいいかを熟知していた。彼女にぴったりの曲がわかっていた。彼はこれだと思えるものができるまで絶対に妥協しなかった」と言っているように完璧主義者のりチャード(案内された自宅のレコード・ライブラリーの整理のされ方は完全に博物館級だった)は全ての車がいつまでも走れるように2人のメカニックも雇っていたが、ガレージの中にはカーペンターズの楽器もそのまますぐに演奏が始められる状態でセットされ、カレンの部屋もそのままの形で作られていて、何だか映画の中に閉じ込められてしまったような気分になったことをよく覚えている。
そんな感覚に貫かれたポップ・ミュージックの玉手箱のような大傑作。2017年11月にはアナログレコードの形で再発売されているから絶対に手入れることをおすすめしたい。


Now & Then / CARPENTERS / UICY-78308
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