ニューヨークではもう何年も前にレコード店が1軒もなくなり、CDを買おうと思ったら ニュージャージーまで行って、それもウォールマートの中の小さな売り場でという(今はもうそれすらなくなったと思うが、、、)現物主義者の僕としてはそこまできたかと溜息をついた記憶があるが、最近ではCDプレーヤーを持っていない若い人も増えているという。
そういう情況の中で天才的なサウンドとセンスある言葉とデリカシーのある精神で一世を風靡した10CCの名盤「びっくり電話:ハウ・デア・ユー」のアナログ盤を手にすると、 「レコード・ジャケットは30cmのアート・ギャラリーだ」という、誰が言ったかも知れぬ名言を思い出しながら、レコードの黄金期へ思いが飛んでいく。
ピンク・フロイドの一連のジャケットに始まり、ポール・マッカートニーやレッド・ツェッペリンといった人気アーティストたちの名盤の顔になった素晴らしいヴィジュアルでロックの歴史に輝ける足跡をの残したデザイン・チーム、ヒプノシス(ストーム・トーガンとオーブリー・パウエルのコンビ)が制作したジャケットは1989年終わりにアナログ盤の生産を0%にしてしまったCD盤では絶対に考えられないもの。CD盤の大きさはちょうどアナログ盤の4分の1なので、ウイスキーのグラスを手に煙草を吸いながら電話をしている女の後方の庭にオースティンヒーレー3000が停まって男と女が降りてきた写真と電話するタフなビジネスマンの写真を斜めに切ってレイアウトしたシュールな表面に対して裏面はその構図がホテルにチェックインしたばかりのスチュワーデスと、怪し気な私立探偵風の男に変わり、中を開くと(そう、アナログ盤の時代には見開きジャケットというものがあったのだ)35人の男女がみんなで受話器を持っている(その中には表面の男女もいる)写真がドーンと出ている凄さは中身のサウンドと見事にシンクロしている。
発表は1976年。1971年にレコード・デビューした10CCの4枚組の作品だったが、オリジナル・フォーはこれを最後に分裂してしまった。一筋縄ではいかないシュールでポップなサウンドを是非楽しんで欲しい。子供にはわからない大人のロックの世界に酔える。

HOW DARE YOU!/10CC / UICY-25356
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