クルマはファッション。ヘリテージカーを、着る。

憧れのヘリテージカー。実際購入するにあたり、選び方や知っておきたいことを、専門家に指南してもらう企画。それぞれのクルマの歴史や他にはない特徴などにもお答え。一緒に、玄人が唸る希少なクルマも教えてもらいました。

20回目となる今回は、ヘリテージカー愛好家達が集うコミュニティ『CLUB CLASSIC CAR LOVERS』。「単なるトランスポーターとしてではなく、ファッションの一つとして車と付き合う」という代表の佐藤陽一さんにお話をお聞きしました。


 

CLUB CLASSIC CAR LOVERSさんは、どのような車を扱っていますか?

佐藤氏(以下S)「このクラブは、クラシックカーをこよなく愛する人たちの会員制のコミュニティーです。クラシックカーが好き、それだけで誰でも入って頂けます。このクラブで扱う車は、会員の方が手放そうとする貴重なクラシックカー達。ですので国籍も年式もバラバラですが、希少価値の高いクラシックカーが揃っています」

どういった活動をされているのでしょうか?

S「基本的には、クラシックカーの個人売買情報の提供がメインです。クラシックカーを所有する人たちの中では売りたいとは思っていても、いざ個人売買の雑誌とかって言われると面倒だし、対応するのが嫌だ、となかなか難儀してしまうケースがあるんです。そういうお宝のような車達を世の中に知らせたい、という思いがありますね。メリットは、売買の際に8%の消費税が発生しない事。デメリットは保証の問題や買った後のメンテナンスのフォローが無い事。なので、ここをサポートするのも主な活動の一つです。将来的には車だけでなく、時計などの様々な趣味の交流の場になれればと考えています」

メンバーはどういった方達なんでしょうか?

S「最初に集まってくれたメンバーはイタリアのミッレミリアとかに出ているコアな方達。今は発足の段階なので、将来的に個人でクラシックカーを持っていたり、興味があるという方達を沢山集めていきたいですね」

それでは、ヘリテージカーに興味がある人たちにオススメできる一台を教えてください。

S「これですね、Porsche 912 Targa。これは相場より値段が安いと思います。この車の形がタルガトップと言って、天井が開くオープンカーに近い形なんですけど、本来リアはガラスでできている所が、とても希少なソフトトップなんです。ソフトトップをたたんでカバーを被せると、残るのはバーだけで、ほとんどオープンカーになります」

ソフトトップの利点はどういう点ですか?

S「やっぱりほとんどオープンになるので開放感が違いますよね。真ん中にピラーが残る事で強度が保たれるので、車自体に安定感があります」

この車のポイントを教えてください。

S「大前提としてこの車のタマ数は多くない事と、意外とこの種の車は改造している車が多いんですが、この個体はオリジナルな状態を維持しています。この車は912ですが、ナローポルシェの原型な事には変わりは無いですから。このクリッとしたライトが付いているのも、ナローポルシェのデザインの、1つのポイントですね」

ナローポルシェのデザインの特徴って、なんですか?

S「ナローポルシェの最大の特徴はこのコンパクトさです。ナローというのは幅の狭いという意味で、だんだんポルシェも新しくなるに連れて大きくなってしまって、このサイズ感は失われてしまっているんです。このコンパクトさ故に見切りがいいので初心者でも全然乗りやすいですし、機械的な面のメカニズムがだいぶ進歩しているので、壊れにくいんです」

それでは次に、ツウな車好きも唸らせる、玄人向けの一台を教えてください。

S「希少価値の高い、Autech Zagato Stelvioですね。ボディデザインとインテリアがZagato(ザガート)によるもの。実は、ここに書いてあるようにオーテックというグループの母体が日産で、エンジンとか機械関係は日産なんですよね。ザガートというのは、有名なイタリアのカロッツェリアです。その2会社の合作で、たったの20数台しか作られなかったんです。1台1台厳密に手作りされているのでそれぞれ、微妙にディテールが異なっているんですが、この個体はその中の11号車になります」

デザイン面での特徴を教えてください。

S「一番驚かれるのが、ミラー。このフェンダーにミラーが隠されている事ですね。デザイナーの意図としては、綺麗なボディラインの中で無作法に飛び出すミラーが嫌いだったんですよ、でも法的にはどうしても付けなくちゃいけないから、デザインの中に上手く隠すように組み込んでしまったんです」

こんな事が出来るんですね…他に特徴的な所はありますか?

S「インテリアも魅力的ですよ。国産車にほとんどないような豪奢な内装。ザガートととのコラボレーションがあったからこそ生まれたデザインですね。まるでイタリア家具みたいで、座り心地も抜群。イタリア車って大体、皆さん一度は欲しがるけど、良く壊れる…なんて聞くと買い控えてしまうんですが、この車は本当に良いとこ取りなんです。エンジンなど機械系は信頼の高い国産で、カッコいい魅力的なデザインはイタリア製。完璧ですよね」

S「もうひとつ特徴でいうとこの屋根も一つですね。名前はダブルバブルと言って、2つもこもこって張り出ている形状で、このデザインはザガートの象徴。車の全高を低くすると、もちろん屋根が低くなる訳じゃないですか、そうするとドライバーの頭が当たっちゃうんです。だからとシートのあるところだけ盛り上げて、それを避けているんです。好きな人が見たら『あ、ダブルバブルになってる!』と盛り上がれるポイントだと思いますよ」

クラシックカー・ヘリテージカーは機能的な面で現代の車に劣ってしまう部分は少なくないと思います。それでも選ばれる、ヘリテージカーの魅力を教えてください。

S「僕個人の想いは、単に車って言われたくないんです。トランスポーターとしての車じゃなくて、時計だったり、女性からするとジュエリーのような自分を飾れるアイテムの1つ。美術工芸品の1つというか、本当に自分にとったらオブジェに近いですね。単純に走る事だけを考えたら今の新しい車の方が燃費もいいし、安全性も高くて良いのかもしれない。だけど自分を表現するものとして考えたら、ファッションと同じでこだわれると思うんです。洋服を選ぶ時は”今日はこれを着ようかな”ってその日の過ごし方を考えて選ぶ。車を選ぶときもその先のライフスタイルを考えて選ぶ訳ですよ。車もファッションと近いんです。だからこうしてメーカーよりも、デザイナーの方が前に出ている車を好きな人はかなり多くいるんです、なんでもマセラティ、フェラーリだから良いとかじゃなくて、デザイナーが誰かを追い続けているコレクターも居ますよ。ザガートが好きな人ザガートばかり集めたり。こういった物としての魅力に溢れているのがヘリテージカーだと思っています」

最後に、このAutomobile Councilというイベントへの想いをお聞かせください。

S「スタートした時はメーカーや出展者が主体だったと思うんですけれど、最終的には売り手よりも買い手というか、オーナー主体のイベントになっていって欲しいと思います。こういうカルチャーを、知らない若い子はまだ多いと思うので、それを継承していくきっかけとなる場はとても重要。日本のメーカーはこれだけ世界にたくさん車を売っているのに、車の文化的な面を見せる場が無いんですよ。だからメーカーもセールス的な面よりも、このイベントの文化的な面を汲み取ってくれればなと。最終的にはやっぱり現オーナー・未来のオーナーを繋げられてサポートできる、コミュニティーになって欲しいと思っています」

photograph: Taku Amano
edit & interview: TUNA
text: Chihiro Watanabe