「良い素材ほど、シンプルに、そのままで。プレーンなPorsche911の魅力。」

憧れのヘリテージカー。実際購入するにあたり、選び方や知っておきたいことを、専門家に指南してもらう新企画。それぞれのクルマの歴史や他にはない特徴などにもお答え。一緒に、玄人が唸る希少なクルマも教えてもらいました。

17回目の今回は、ポルシェ全般を取り扱うザ・ガレージワークスさん。半世紀以上続くポルシェ911の中でも、最もシンプルな初代の901型を題材に魅力を教わります。



ザ・ガレージワークスさんはどのような車を扱っているのでしょうか?

高橋氏(以下T)「基本的にポルシェ全般の古い物から現行の物まで。販売だけではなく整備・修理・車検などのメンテナンス側の業務も行っています。オイル交換などの簡単な整備からエンジンのオーバーホールなどの難作業までを一手に引き受けています」

ポルシェという車について、再度一から教えてもらってもいいでしょうか?

T「ポルシェは元来ドイツのスポーツカーのメーカーなんですが、スポーツカーでありながら、日常の足としても充分に使える車です。例えばイタリアのフェラーリやランボルギーニだったりっていうのは、高いスポーツ性を持つ車ですが、普段の足として乗れるかというと少し難しいと思っています。ところがポルシェは普段から乗れますし、そのままサーキットで走ることもできる非常に身近な存在でありながら、やっぱり皆が憧れる存在ですね」

では、今日展示している中で「これからヘリテージカーのポルシェを買いたい!」というビギナー向けの一台を教えてください。

T「この中でという事でしたら、このオレンジ色のPorsche 911Tですね。今でも作り続けられているポルシェ911の、一番最初のモデルになります。911の後についているTはツーリングの〝T〟他にもS、RSなど様々なバリエーションがありまして、その中でのTは比較的マイルドなキャラクターです。1970年製の車ですが、マニュアルの免許さえあれば普通に街中で乗って頂けますよ」

この車の特徴について教えてください。

T「この911Tはスポーツ性に特化している訳ではないので、タイヤを覆う部分のフェンダーがあまり張り出てなくて、ボディラインがとても細く見えるんです。派手さはないのですが、抑揚のないスラッとしたサイドラインが魅力です。911は長年変わらないデザインで作り続けていて、どの時代の911を見ても一目で〝あ、ポルシェだ″と分かるものですが、その911の中で最もシンプル&プレーンなこのデザインはとても魅力ですね」

T「あともう1つ、所々のパーツでメッキが用いられているのはポイントですね。モールやバンパー、ミラーなど。全体的なデザイン自体はとてもシンプルですが、どこか垢抜けた美しさがあるのは、このメッキがアクセントになっていることも大きいと思います」

内装でのこだわりはどこでしょうか?

T「中のメーターを見てもらうと、5つのメーターが整然と並んでいますよね。メーターにも様々な役割があって、普通はメーターの役割によってサイズと位置がバラバラなのが一般的ですが、あえて同じ大きさで、横一線に並んでいるのが非常にポルシェらしい。まるで飛行機のコックピットのような、走る気にさせてくれる雰囲気を持っています。後ろのシートは狭くて非常用とはいえ、形だけでも四人乗れるというのも実用的な所で、古いからと言ってガレージに保管しておくのではなく是非普通に乗ってあげて欲しいですね。実は大事にしてガレージで眠らせておくより、普段から乗ってあげた方が車にとっては良いんですよ」

では次は、ツウな車好きも唸らせる…そんな魅力的な一台を教えてください。

T「玄人向けという感じですと、このスレートグレイのPorsche 911Sですね。さっきお話ししたグレード、この車はスポーツを意味する『S』。このワイドになっているボディが特徴で…と言いたい所ですが、実はこのフェンダーは後付けで、車の中にロールケージと言って、鉄のパイプを組み込んで、本格的にサーキットで走れる様な仕様になっている車です。シートベルトも5点式と言って、肩と股の下の5箇所でがっちりホールドする、レース用の物。タイヤもグリップの高い太い物を入れるために、フェンダーは前も後ろも膨らんでいまいて、完全に実用性は無く、純粋にサーキットを楽しんで遊ぶ方たち向け。『ポルシェでサーキットを』という玄人の方向けの一台ですね」

機能性だけでいうと今の車に劣る面も多いと思います。それでもヘリテージカーが良いという魅力は何でしょうか?

T「一番大きいのはデザイン。今の車では実現できないデザインがたくさんありますよね。その次は運転の楽しさですね、クーラーもないし、ナビもパワーステアリングも、今の車には常識的な物もほとんど無く、運転していて快適な事は決して無い。そういった部分では確かに運転するのは簡単ではないですが、その代わり運転する時のダイレクトな感覚や音など、気分を昂らせてくれます」

最後になりますが、このAutomobile Councilというイベントへの想いをお聞かせください。

T「こうした古き良き名車たちが好きな人たちに向けたイベントなので、非常に雰囲気もよいですよね。こうして好きな方達にじっくりと車を見て頂いて、ゆっくりお話しできて、なおかつ車も売る事が出来る。理想的ですよね。今は2ホールだけですけど、もっと広くなって長く続くイベントになって頂ければなと思います」

Photograph:Taku Amano
Edit & interview::Tuna
Text:Chihiro Watanabe