「憧れのポルシェ屋に乗りたい!」

憧れのヘリテージカー。実際購入するにあたり、選び方や知っておきたいことを、専門家に指南してもらう新企画。それぞれのクルマの歴史や他にはない特徴などにもお答え。一緒に、玄人が唸る希少なクルマも教えてもらいました。

今回は、ポルシェ専門のショップナインプロダクション。50年近くの長い歴史を持つ911を始めとした、ポルシェの魅力をお聞きします。



まず、ショップナインプロダクションさんは、どのような車を扱っているのでしょうか?

佐野氏(以下S)「ポルシェですね。年代は古いものから新しいものすべてを扱っています。ポルシェというとやはりスポーツカーのメーカー。911というモデルが1965年から現在まで、名前を変えずに販売され続けています。911の先代にあたる356の時代から一貫して、ポルシェというのは非常にステータス性の高い車で、持つ事も楽しみ方の一つですね。日本で90年代にオートマチックが出始めてからの新車販売は90パーセントがオートマチックだそうですが、私たちのお客様などの旧型のポルシェ欲しい方は90パーセントマニュアルを選ばれますね。乗ってこそ楽しいスポーツカーという方はやはりマニュアルですよね」

やはりポルシェと聞くと早くてカッコイイ、スポーツカーのイメージをですよね! 日本ではどういった存在なんですか?

S「もちろん昔から人気はありましたが、元々ポルシェに関して言えば日本が一番安かったんです。要するにポルシェに対する価値観が低かったんですね。本国ドイツやイギリスではすごくポルシェに対する評価が高い。そんな中リーマンショックから経済が復活してきて円安に振れた事で世界一安い日本のポルシェが更に安くなり、世界中から買い付けが入って、ポルシェに限らず多くのクラシックカーが日本から流出してしまいました。3年くらい前から為替も景気も悪くなると同時に収まってきたんですが、今日本市場にある限られた数の車を日本の方が求める事で非常に値段が下がりにくいのと、一度自分の物の価値が高くなったのを知ってしまうと、どうしても皆さん安くは手放そうとはしたがらないですから、二つの理由でクラシックポルシェの値段も高くなってしまっているのが現状です。私たちの想いとしては、海外の方に売るのも利益は変わりませんが、やはり日本の方に大切に乗って頂きたいんです。買って乗って、メンテナンスをしていただいて、そういった長いお付き合いを大切にしていますから、次に乗り換えるタイミングで車をお戻し頂くだけでなく、また買って頂ける。そういったリピーターの方が多いのは、本当に嬉しい事ですね」

それでは、これからクラシックなポルシェを手にしたい!というビギナーの方にオススメできる車を、教えてください。

S「このPorsche 911 Carrera2ですね。911は、デザイン面で言うと65年から94年のこのモデルまで、ほとんどデザインが変わってないんです。目の部分が立ってて、お尻が下がっているという、これぞ911というスタイル。これが30年続いた訳ですからそれほど完成度が高かったということなんです。だからこそ今でも人気が高く、このデザイン=ポルシェという方も世界中で多いです。この後の911は少し目が寝てしまって、やはり少し人気が落ちてしまったんです。ですから、初めての方にも是非この顔の911に乗って頂きたいですね」

変わらない911の姿、どの辺りが魅力的なポイントでしょうか?

S「やっぱり1つはお尻ですね。屋根からエンジンフードからギュッと絞れて一直線に綺麗なラインを描いています。ですが絞れているにも関わらず、このフェンダーが大きく張り出ていて、シルエットの抑揚がすごく綺麗なところは凄く魅力的ですよね。そしてフロントも、この目が立っている30年変わらなかったデザインですね。どの角度で撮っても絵になって、カッコいい。とても完成度の高いデザインだと思います。このデザインはどこから見ても絵になるのはもちろんですが、どこから見ても“あ、911だ”とハッキリ分かるんです。これは凄いことだと思いますよ」

やはり、クラシックカーを手にする時に一番不安なのが故障についてなんですが、この911はどうでしょうか?

S「発売から20,30年と経っている車ですから、当然残存している予備部品も少なくなっているのですが、逆に20,30年と経っても走れるのは大切にメンテナンスされてきた証拠ですから。それと、911は世界中にファンが居ますから、大体のパーツは海外にもありますし、壊れて直せない事はほとんど無いですよ。この車で言うと、このモデルからエアコンが付くようになったり、非常に全体的に快適に乗りやすくなっているのもオススメの理由のひとつですね」

それでは、玄人な方達に向けてオススメできる、魅力的な一台を教えてください。

S「やっぱり特殊で珍しい車が良いと思うので、こちらのグリーンのPorsche 911 Carrera RS3.8 Lookですね。世界限定で出た車をモデルにして作った車になります」

この、ルックというのはどういう意味ですか?

S「実は本物のRS3.8というモデルは世界で100台程しか販売されず、25、30年近く経った今はなおさら数が少ないんです。本物を買おうとしたら5000、6000万では足りないかもしれません。そんな貴重なRS3.8と同じ仕様になっているのがこの車両ですね」(笑)」

なるほど。どういった辺りが魅力的なポイントになりますか?

S「1つ目としてはホイールです。特にリアホイールの深さですね。こういった深くえぐられたようなデザインというのは、コストがかかるので今はもうやらないんです。でも昔はこの深リムのホイールは絶対でしたから。やっぱり深いのはかっこいいですよね。それとやはり後ろの迫力は流石ですよ。いわゆるバードボディといいまして、フェンダーがより外に張り出る格好になる上、この強烈なウイングですね。この車に前に出られてしまったら勝てる気がしませんよね(笑) あとは、内装で本物のRS3.8と同じシートを使っているところです。今買おうと思うとシートだけで100万円はくだらないかもしれません。乗り心地がよく、疲れにくいです。本物はエアコンも何もついていないスパルタンな仕様なので、格好は本物と同じ迫力のあるボディを楽しめますが、快適性は桁違いに良いというのも魅力ですよね。本物は買えるような値段ではないですけど、こちらはまだ手の届くものですから」

では、クラシックカー・ヘリテージカーの魅力とは何でしょうか?

S「今の車と古い車の一番大きな違いは、コストアップかコストダウンだと思います。昔は各メーカーともに、どれだけお金を掛けて、どれだけ技術力があるかを示すために車を作ってきた部分があったんですが、やはり時代と共に大量生産コストダウンという方法に世界は傾いてしまいました。パッと見てもどこをコストダウンしたのかは分かりづらいのですが、その積み重ねで全体的に雰囲気が消えてしまったといいますか、魅力を失ってしまいました。昔の方が当然組み立てにロボットなどはありませんし、あらゆる部分で時間と手間がかかっていました。そして、その分こだわって細部まで作りこまれていました。魅力というのはそういうこだわりから生まれるモノが大きいですから。今のご時世、快適で安心安全な新しい車は山のようにあるのにも関わらず、古いモノを選んでしまうのはそれだけ当時のこだわりや、デザインなど魅力的という事だと思いますよ」

最後になりますが、このAutomobile Councilというイベントへの想いをお聞かせください。

S「こうして沢山のヘリテージカーを同時に見られる機会は貴重ですよね。やはり流行や、時代と共に古いモノは数を減らしてしまう一方ですから。それに、日本は国の方針として新車時から13年以上経つと、税金が上げられてしまい古いモノはどんどん淘汰されてしましまう、ヘリテージカーが残りづらい環境なんです。イギリスなど、海外の多くでは乗り換えずに長く乗り続ける事がエコと見なされて、非課税になるところすらあるんですけれど。そういったところも乗り越えて続けていくことが大切だと思いますし。続けて頂くことで、日本にヘリテージカーの文化を根付かせられるのではないかと思います」

Photograph:Taku Amano
Edit & interview::Tuna
Text:Chihiro Watanabe