「生きてきた2/3がヘリテージカーとの付き合いだから、もう人生そのものですね」

「もともとはボロボロだったんです。それをバラして3年くらいかけて綺麗にレストアしました」という佐藤さんの愛車は『1965 アストンマーチン DB5』。メッキパーツは全て再メッキし直したり、上質レザーのシートをほどこしたりとどこまでもこだわりぬいたデザインは、最高級の風格が漂います。「クラシックカーはもう人生そのものですね」という佐藤さんに愛を伺ってきた。

沢山の貴重なヘリテージカーがガレージに勢ぞろいしていますね! これまで何台くらい乗っていらっしゃるのですか?

佐藤さん(以下S)「もう100台くらい乗ってるよね。20歳前後で免許とってすぐにクラシックカー買ったから。このガレージ以外にも他のガレージに入れていて今は15台くらい保有しています」

凄いですね。このガレージにある車はそれぞれどのようなものですか?

S「まずヴァンディーニ。イタリアの小さい車メーカーで全部で48台しか作ってないものです。しかもこのモデルに関しては5台だけしか作られていないかな。デザインに一目惚れして。こうゆうデザインはあまりないですね。レースで使用しています。ボディが軽いから早くて楽しいよね。ボディは500kgくらい。エンジンは750ccでオートバイのエンジンサイズくらいです。でも、ボディが軽いからそれなりに早さが出る。あと、エンジンが美しい…こんなに綺麗なエンジンがあるのかと。750ccでツインカム。全て手作りで、ボディもアルミを叩いて作ってあります」

S「次はマセラティ スパイダー ザガートで1987年のものですね。やはりこれもデザインがかっこよくて。インテリアが素晴らしい。特に時計があるあたりが抜群の造形美だよね。この内装見てグラッときちゃったよね。これは、マセラティがボディ屋のザガートに作らせたもの。特殊だよね」

S「あとはフェラーリディーノ246L。ディーノは世界に数は出ているけど、Lは150台くらい。’70年式のものです。真横から見た時の全体的な曲線美が好きです」

S「ちなみに、それはイタリアのMOMOが30年ほど前にデザインした自転車です。MOMOといえばヘルメットやハンドルなどのイメージだけど特別に作ったもの。木でできています。欲しい人がいれば売りたいんだけど(笑)」

凄いコレクションですね! この中で最も好きな車はどれですか?

S「どれも気に入ってるよ(笑)。でもどうしても1台残せって言われたら…このアストンマーチンを残しちゃうかな」

なるほど。どのような想いがありますか?

S「若い頃に映画『007』で見て『なんだこれは?』って。プラモデル屋で買ってきて組み立ててずっと眺めていました。ずっと憧れの車ですね。いつか買いたいと思っていて、それが仕事の原動力になりました。僕らの世代は多いと思うよ、最近の子たちはあまりないそうだけど。それで、たまたま友人がこのアストンマーチンを持っていて。ボロボロだったのですが、レストアしようと。全部バラしてゼロから作っていって、全部綺麗にしました。夢が叶った感じです」

完成までどのくらいかかったのですか?

S「5年前に買って3年くらいはかかったかな。メッキパーツなんかも全部再メッキしなおして。メーターの所のリムのメッキも全部。大変な作業だった(笑)」

このバッグは何でしょうか?

S「シートを全部レザーにしたんだけど、少し多めに発注して、同じレザーで車検証入れやバッグを作ったんだよね。コノリーレザーで。そこまでレストアする人はいないでしょ?(笑)」

物凄いこだわりですね! デザインで特に気に入っているところは?

S「全体的にもう美しいんだけど、まずはフロントビューかな。あとワイヤーホイール。絶妙だね」

メーターもかっこいいですね。

S「いいよね、メーターもクラシック。ほんとアナログのメーターだから。現行車のデジタルでまとまったメーター、あれが僕はダメで。各メーターが単体で機能していて、それらがレイアウトされていて。このレイアウトが美しい」

実際に走ってみて感じたことは何でしょうか?

S「ちょっとハンドルが重い。慣性がないからね。重いんだけど走り出すと快適です。60年代の車にしては快適に走れます」

走っている時、どんな音楽を流すのが好きですか?

S「僕はそのクラシックカーの年代と同時代のものを聞くのが好きで、これは’65sなので、モータウンあたり。マーヴィン・ゲイとか気持ちいいよね」

現代の車と比べて不便だけど愛しているところは?

S「まずはエンジンをかける時にチョークを引っ張って…かかった時に嬉しいよね。そうゆう動作が今の車ってないでしょ。エンジンかけてちょっとアイドリングしてる、その間がぞくっとします。エンジン音は一台一台違うから。五感に訴える感じ」

では、ここまでこだわった理由は何でしょうか?

S「僕はもう62歳で、あと10年乗れていいところなんだけど、周りにも『そんな車レストアしてどうするんだ』って言われたりして。でもやっぱり後世に残したいという想いがあって。特に、息子がこれを乗り継いでくれたら嬉しいです」

後世に残したいという想いですね。では佐藤さんにとって愛車とは何でしょうか?

S「まさしく愛車だよね、愛してやまないっていう。存在としては…うーん、やっぱり自分そのものかなって気がするよね。DB5なんかも沢山あるけど、この色の組み合わせと、このレザーのグッズまで作ったDB5って他にないから。これが佐藤なんだっていう。自己表現の一つなんだよね。ただ、見せびらかすためじゃなくて、単なる自己満足です。自分のため」

なるほど。では最後に佐藤さんにとってのヘリテージカーとは何でしょうか?

S「そうだね、やっぱり人生のもう3分の2が車と付き合いだから、人生そのものかな。自分の過去振り返った時に、あの年代にこうゆう車乗ってたよなとか、そういう思い出があります。車自身が人生そのものって言ったら大げさかもしれないけど、僕の場合はそうなんだよね。若い頃は、例えば女の子の気を引くためのツールとして使ってた時期もあったかもしれないけど、特に40代くらいからもう、ほとんど女性は乗せていないね。かみさんはまぁ乗る事もあるけど、彼女もあまり乗らないけどね。大体一人で乗る時が多いよね」

自分の人生のため。

S「かみさんに言ったら怒られるかも知れないけど、車は似たような存在で。自分にとっては必要なものなんだよね。何というか…心の充足感、高揚感とかっていうのは車かな。人生の半ば過ぎちゃうと、ちょっとやそっとで、心が興奮しなくなるけれど、車は変わらず高揚させてくれるものだよね」

Photograph:Taku Amano
Edit & Interview:TUNA