「走ってナンボ。新しい遊び方の提案。」

憧れのヘリテージカー。実際購入するにあたり、選び方や知っておきたいことを、専門家に指南してもらう新企画。それぞれのクルマの歴史や他にはない特徴などとともに、玄人が唸る希少なクルマも教えてもらいました。

今回は知る人ぞ知るファクトリー「エムズバンテック」。
Ferrari 308 Gr.4 Biancoなど超希少な車が揃います。



まず、エムズバンテックさんはどのようなお店でしょうか?

諸井氏(以下M)「販売・制作から、レストアまで。車種に関しては、自分が好きって思える車を扱っています。一般的な整備はもちろんですが、特にレストアに関してはトヨタ2000GTが圧倒的に多いですね、常時10台ぐらいはいます。レストアに必要なパーツで欠品って凄く多いんですけども、うちの会社は部品をほとんど作って対応しています。ただ最近は作りもの、いわゆるコンプリートカー制作も去年から始めていて、こちらの製造・販売も行っています」

このコンプリートカーとは、どういったものになるのでしょうか?

M「昔のフェラーリの308をベースにしているんですけども、実際に使っているものはフレームだけで、全てのパーツを作り直しています。モデルとしてはワークスカーではないんですが、70~80年代前半のミケロットってところが作ったGr.4のカテゴリーのレーシングカーを、ほとんど同じ手法で再現しています。見た目は市販された車と似ているんですけど、中身は全く別物ですね」

なるほど、これは初心者の方には難しいですね(笑)。この展示の中からだと、入門向けの車は難しいでしょうか…?

M「そうですね(笑)。ちょうどここにあるフェラーリ308は、オリジナルだと車のボディ剛性が低いので、実はあんまり乗って楽しい車ではないんですね。そういう意味でもあんまり入門向きではないんですけれど、あえてフェラーリ入門用の車を挙げるとしたら、この308の後継モデルの328ですね。世代的に電子部品が少ないんですね、要はアナログなので、専用の部品がないと車が動かなくなってしまうということがない、なんとか作ったり、他の使ったりで修理したら一生乗れると思います」

故障しても、なんとかなるんですね。

M「この辺の年代までの車なら、直しさえしてあげればいくらでも乗り継げる。今の車なんて、電子部品が1つなくなるだけで修理もできないなんてケースが実際にある訳ですから。より新しくなればなるほど使い捨てになってしまっていますよね。壊れたらそのままそっくり乗り換える。ところが昔のものは部品単位で交換できるので、本当にそれが好きならいくらでも使い続けられる。車を乗り換えなくても部品だけ変えれば良い、その方が比較的リーズナブル。そういう意味では古い車は意外と維持がしやすい。と言っても328も随分高くなってしまっていて、以前は500万で買えていたモノが、今だと800〜900万。あくまでもフェラーリの入門という事なら、まだ手は出しやすい方ではありますね」

なるほど…このところヘリテージカーの相場は上がっているんですね。では、一台一台お話を伺っていこうと思うんですが、こちらはどのような車なんですか?

M「メルセデスですね。AMGの190e2.5-16EvolutionⅡ。ドイツツーリングカー選手権を走っていた、本物のワークスカーです。これは90年の車なんですけども、その年の第四戦で優勝した個体です。翌年の91年にメルセデスはDTMのシリーズタイトルを取る事になるんですけど」

M「中々手に入らないですけど、DTMは世界中にものすごいファンがいるので、大切にコレクションされて残っているんです。面白いのが、レーシングカーなのに当時のレギュレーションで内装を残さないといけなくて、よく見ると内装にロールゲージを逃げる為のくぼみがあるんです。雰囲気を壊さない、丁寧な加工ですよね。
あくまでも標準車から作らなきゃいけないのに、改造の範囲が凄く限定されていて、市販されたダッシュボードを使わないといけないとか、ルーフは鉄なのに、フロントフードは制約がないのでフロントフェンダーもエンジンフードもドライカーボンで出来ていたり。じっくり見ると当時の苦心が伺えますよ(笑)」

こちらの車は珍しいカラーですね?

M「これはランボルギーニのカウンタック5000QV。クワトロバルボーレってやつですね。当時から相変わらず一番人気くらいの王道のスーパーカーで、特別この車の色は、世界に一台しかないんです。
昔アラブのお金持ち何台かオーダーしたらしいんですけど、その時にランボルギーニチーターっていう大きい4駆のSUVがあって。それが、サンドベージュっていうこの色なんですよ。砂漠を走るようなイメージで作られたんでしょうね。とにかくスペシャルオーダーの車だから、新車の時からこの色なんですよ。純正でこの色はこの一台だけですよ」

最後になりますが、現行車に対してヘリテージカーの魅力、並びにAUTOMOBILE COUNCILについての想いをお聞かせください。

M「ヘリテージカーの魅力は、個性的なデザインと、個性的な乗り味。メーカーによって本当に多種多様で、当時のどの車種に乗っても、例えばメルセデスに乗れば、メルセデスの色を感じる事ができる。ところが新しくなればなるほど、どこの車を乗っても差が少なくなっているように感じますね。ヘリテージカーにはあって、今の車には無いところ、そこが一番の魅力ですね。
このAUTOMOBILE COUNCILは、売る側も見る人も真剣で、ゆっくりいろんな車を見て考えられるこの空間はとても貴重だと思います。凄く真面目で大人なイベントというか。展示だけに終わらず、きちんとプライスを出して、ルールもしっかりしてますし、これからどんどん継続して、成長してもらって。僕達も一緒に成長できれば良いなと思っています」

Photograph:Taku Amano
Edit & interview::Tuna
Text:Chihiro Watanabe

Shop Information

エムズバンテック

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