1980年代が終わりかけた頃、ホンダの栃木研究所にメディア、ジャーナリストが呼ばれた日のことは今も忘れられません。NSXのプロトタイプ試乗会が催されたのです。
比較に用意されたのはポルシェ911とフェラーリ328GT。この事実からもホンダがいかに新しいミドエンジン・スーパースポーツに自信を持っていたかがわかります。
実際生産型も素晴らしい仕上がりで、目の肥えた世界のスポーツカーファンを驚かせました。

ATモデルを用意、タルガトップ・モデルを後から追加する等、バリエーション展開も図ったNSX。その最たる例がタイプRといえるでしょう。Rが示すのはもちろんレーシング。徹底的な軽量化とメカニカルチューンによる精度の向上、サーキット向けの低く硬められたサスペンション等、ダイナミクスの向上に特化したモデルでした。

28年の時を経て昨年デビューした新型NSXは、時代背景に相応しくハイブリッド・スーパースポーツとして生まれ変わったのが最大の特徴です。とはいえヨーロッパのスポーツカーメーカーのように少数限定生産ではなく、シリーズプロダクションであることがホンダならでは。初代同様ピュアスポーツカーのハードルを下げるNSXの思想はちゃんと引き継がれています。