CLASSIC CAR LOVERS
クラシックカーを愛する人々

2017.05.18 | Special

volume 11_Keisuke Inoue

井上敬祐さん(NASH LOCATION SERVICE 代表取締役)
車種_マスタング(’65年式)

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「そのクラシックカーが最先端だった頃のリアルな空気感を、当時の音楽と共に再現したい」

ロケバス会社「ナッシュ ロケーション サービス」で代表取締役を務める井上さん。日々、車と向き合うプロフェッショナルな彼がチョイスしたのは深いボルドー色でシックかつ高級感漂う「65年式のマスタング」。これまで50〜60台という数のクラシックカーに乗ってきたというから驚き。その全ての車をできる限り、当時の部品でレストアすることにこだわる…その情熱、想いとは一体?

クラシックカーにはいつ頃から興味を持たれたのでしょうか?

井上氏(以下井)「父親が割と車が好きで、僕が小学校低学年くらいの頃に乗っていたのですが、興味を持ったのはその頃ですね。父は音楽はブルースが好きだったのですが、助手席でずっと聴いていた記憶があります。僕にとって少年時代の音楽は家の中ではなく車の中のイメージ。それで音楽が好きになって、中高生ではギターばかり弾いてましたね、学校にも行かずに(笑)。20歳くらいからはサーフィンにもはまってずっとやっています」

現在、ロケバス会社をやっていらっしゃいますが、ここに行き着いた経緯を教えてもらえますか?

井「20歳の時に東京に来たのですが古着屋でバイヤーとして働きました。その後、車やバイク系の雑誌を作っている出版社に入って編集者になりました。月刊誌だったのですが、毎日終わらないって言い続ける感じが我慢できなくなって。それで服屋と編集の時に知り合ったスタイリストさんやカメラマンさんなど、このコネクションを無駄にせず、何かできないかなあと考えて、車も好きだしロケバス屋ならできるんじゃないかな?って感じで(笑)。運転も好きなので、車を扱う仕事だったら何とかなるんじゃいかなってことで始めました。今、会社を設立して13年目です」

では、初めてクラシックカーを買ったのはいつ頃ですか?

井「元々はバイクが好きで10代では古い『ハーレー』ばかり乗っていたのですが、20歳で車の免許をとってトヨタ『スタウト』のピックアップトラック70年代を買いました。これは田舎の自動車屋さんの廃車置場に捨ててあるのをたまたま見つけて…そのまま朽ちて行く予定だったトラックですね。ビジュアルが独特で60年代『シボレー』を彷彿とさせるフロントガラスがラウンドした変わったトラックで『これ動きます?』ってそこのおじさんに聞いたら『いや、どうだろう?』って(笑)。動かしてみたらさすがトヨタ、古い車でもエンジンかかって、じゃあ乗るかと。これを買ってからこれまでクラシックカーは50〜60代は乗っています」

凄い数ですね!? 服屋や編集者の時も様々な車に乗っていたのですか?

井「はい、変なのばっかり(笑)。編集者の時は当時ボロボロの『グロリア』に乗っていて、床穴空いているみたいな。お金もなかったのでガソリンなんて満タン一度も入れたことないんじゃないかな。木を買ってきて自作でルーフキャリア作ってサーフボード乗っけてました」

ロケバスの方って車好きで、サーファーの方が多いですが、それって何か理由があるのでしょうか?

井「僕もそれ考えたことあるんですが…サーファーは『明日波が良い』ってことで早起きが苦じゃない感じ。アホみたいに3時4時に起きて…僕らロケバスも毎日そうです。共通点はそこでしょうね、早起き得意(笑)」

では愛車の『マスタング’ 65年』についてお聞きしていきたいのですが、出会ったきっかけは?

井「ネットサーフィンしてて、川崎の車屋さんの在庫車にあって。65年のコンバーチブルは結構珍しいのと、純正色にはないカラーに惹かれました。良い茶色だなと。でも全然走れる状態じゃなくて、結局エンジンを新品に乗せ替えました。元々289キュービックインチの4700ccくらいの純正のエンジンが乗ってたやつを、この当時には存在してない305という5000ccのエンジンを新品で。なので、かなり調子良いです。アクセルをグッと踏むとホイルスピンする感じ…今大人しく走ってますけど(笑)」

内装で変えたところはありますか?

井「メーター類も新品ですね。一年所有して結局半年くらいはなんだかんだ修理、レストアに入ってました。内装で気に入っているのは、マスタングは一年毎に内装が違いますが、65年は丸メーターでこの年代ならでは。こういうラジオありそうですよね。ヒーター、クーラーもあって、オートマですし、パワステ。今の車と違うのはパワーウィンドウくらいじゃないですか? これにパワーウィンドウがついたらいわゆるフル装備。パワステは女の子でも運転できるくらいですし、これキットでビジュアルがこのままでパワーウィンドウにもできるんですよね」

カラーの他、外装で好きなところはどこでしょうか?

井「この年式はフォルムがポテっとしていますね、もう少しデザインできたでしょ?って(笑)。でもそれを良しとした年代がいいですし、面白いところ。モールとか本当はメッキのモールとか普通に付けそうですが、なんか表向き感があって」

これまで50〜60台乗られているというかなりの数ですが、理由は何でしょうか?

井「完成させるまでの過程が好きなんでしょうね。『あれをこうしたい、ああしたい』って思っている時が一番楽しくて、進行状況を確認しに行ったりする時が好きです。 もう出来上がりそうになると『次何乗ろうかな』と考えてます。基本的には当時の状態でどの車も復元したいので、カスタムっていう感じではなく、当時の姿を取り戻していくっていうのが気待ちいいのかなって思います」

では沢山のクラシックカーの乗られてきて、この愛車の良いところは?

井「サイズ感がいいですよね。当時のコンパクトカーとして大ヒットしたもので、60年代前半っていわゆるインパラだったりとフルサイズが大流行りしていた時に、このコンパクトカー。今の時代に乗るのにオシャレかなと思います。もちろんフルサイズもカッコいいとは思いますが、じゃあ実際に都内で乗ってたら…不便ですね(笑)定番として今でもちゃんと足にできるっていう車だと思います」 もう出来上がりそうになると『次何乗ろうかな』と考えてます。基本的には当時の状態でどの車も復元したいので、カスタムっていう感じではなく、当時の姿を取り戻していくっていうのが気待ちいいのかなって思います」

どういう時に乗られますか?

井「天気が良い休日とかですかね。この辺の車って1人で乗ってる方がカッコよくて絵になると思います。音楽は元々音楽ばっかりやっていたのもあり、オールディーズから、ブルースこの当時のジャニスやマービンゲイなんかを聴くのが好きですね」

クラシックカーと音楽は繋がるところがありますよね?

井「そうですね、その年代の音楽を中で聴きたくなります。70年代の車だったら70年代だし、80年代だったら80年代の音楽を聴くと合いますよね。音はデザインそのままでレトロオーディオっていうアメリカのブランドのものを入れてます」

マスタングが登場する映画で好きなものはありますか?

井「フランス映画の『男と女』。白いボロボロのマスタングを主人公が乗り続けているけど、一切マスタングにはフューチャーしないんですよ。でも凄く自然に乗っていて。空気感がいいですね」

バイクも珍しいものに乗っていらっしゃいますね?

井「65年『BSA』のA65です。これはエンジンしか残ってないです。本当は全然違うバイクですね。エンジン以外はアメリカ人が全部作って、全然オリジナルじゃないです」

では、井上さんにとってクラシックカーの魅力とは?

井「僕の場合は、音楽が好きなので、車と同じ年代の音楽をかけて当時のリアルな空気感をこの車内で作ることができること。タイムスリップできるというか。当時、この音楽聴きながらこのエンジン音を聴いていたんだと思うとグッときます。できるだけ当時の部品でレストアすることにこだわっているのですが、その理由は当時のままを体感したいんだと思います」

最後に今後どういう人生を送っていきたいでしょうか?

井「まだまだボヤっとしているんだと思いますね。やったことがないこともまだまだたくさんあるし、それを片っ端からやってみて、もしかしたら僕は車や音楽じゃないかもしれない。ただ、今は車が好きだからこの取材のように記事を見た若い子が興味を持ってクラシックカーに乗ってくれたら嬉しいですね。自分のところの従業員たちで、全くもって古いものに興味がなくて入社して、何となく先輩たちが変な車ばっかり乗っていて『車の話ばっかりしてんなー』と。そこに興味を持って時間とお金を使っていく若手たちを見てるとすごく満たされる気分になります。若い子たちに影響力があるライフスタイルだったり愛車の話をして価値観を共有したりする時間に喜びを感じるのかもしれません」

photograph:Taku Amano
edit:Takafumi Matsushita

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