「バブル当時のあこがれの車を、今こそ。」
憧れのヘリテージカー。実際購入するにあたり、選び方や知っておきたいことを、専門家に指南してもらう新企画。それぞれのクルマの歴史や他にはない特徴などとともに、玄人が唸る希少なクルマも教えてもらいました。
5回目となる今回は、バブル時を彩った憧れの車を取り揃える「はらモータース」。今の時代だからこそ、とってもクールなヘリテージカーは必見です!
クラシックカーに興味を持ち始めた人達のために「ヘリテージカーの魅力や実際のところどうなの?」という所をお聞き出来たらと思っています。まず、はらモータースさんはどのような車を扱っていますでしょうか?
「80年代から90年代半ばまでの、今でいうネオクラシック、当時でいうバブル期の車を中心に扱っています。ポルシェだと930型、フェラーリでいうとテスタロッサだったりとか。当時ブームだった車がメインですね。」
その辺りを取り扱おうと思われたきっかけは?
H「父の世代がバブルの時代で、やっぱり父たちが憧れた車に自分たちも影響を受けていて。父が好きなものを自分も自然に好きになっていき、そういう車がないこの現代に、魅力を広めていきたいなと。今の車はもちろん快適で凄いのですが、やっぱりミッションだったり、車を意のままに操る楽しさを広めていきたいという思いがきっかけです。また、実家が車屋を営んでた影響もあります」
なるほど。それでは、今回展示している中で一番ビギナーの方々に向いている車両はどちらになりますか?
H「この中でなら…多分BTRじゃないかなと。1985年発売の、RUF(ルーフ)のBTRっていう車なんですけど、発売当時最速級の車だったんですね。この後にCTR、通称イエローバードっていうすごい有名な車が出るんですけど、その前のBTRも速かったんです。で、このBTRの中でカブリオレは3台しか作られてないんですよ。その3台のうちの1台です。オリジナルです」
あれ、これってポルシェではないんでしょうか?
H「RUFっていう、元々ドイツの整備工場だったところです。そこがこのポルシェのチューニングを始めたのですが、エンジンとかのチューニングから始まって改良してフェンダーを大きくしたり、空気抵抗を減らすためにボディ丸ごと変更したり、どんどん規模が大きくなって、ひとつのメーカーの様になっていったんです。車検証もRUFでベースは確かにポルシェなんですけど、この車はRUFの車なんです」
なるほど、チューニングカー!となると、初心者の方には少し難しいのでは…?
H「初心者の方でも走りやすいと思います。このRUFは信頼性とか耐久性にしっかり責任をもっていて、最高速なら300キロ近く出るチューニングカーなのに平気で街乗りもこなせちゃう、そんな懐の深い車なんです。この会場までだって、自走で来ているんですよ。それに当時のスーパーカー、GT2とかそういう手の届かなかったり、数が少なくて買えなかった車に近い味わいを簡単に楽しめるというのもポイントで、単純に乗り物の大きさだけでいっても今置いてある車達の中で一番小さく、小回りが利きくから街乗りも全然できちゃう。マニュアルにさえ慣れればどなたでも運転できますよ」
デザイン面の魅力はどのあたりになりますか?
H「まずこの色ですかね! かっこいい。オープンカーという部分も写真映えしますよね。あとはこのワイドなフェンダー。これだけで凄まじいインパクトです。ちょっと通なところで言うと、先代の930型にはないこのホイールですね。ホイールがRUFのホイールなので、一見普通のポルシェに見えて、見る人が見れば「おっ?」ってなると思います。なにしろ、世界に三台しかないんで、人と被らないのも良いですよね」
さて、次は玄人の方に勧められる車はどちらになりますか?
H「イギリスのアストンマーティン、ラゴンダですね。アストンマーティンはやっぱり007に出ているDB5とかヴァンキッシュとかが有名だと思うんでけど、このラゴンダもアストンマーティンには大きい存在なんです。元々ラゴンダは別メーカーで、アストンマーティンと合併して、アストンマーティン・ラゴンダっていう社名になったんです。後にアストンマーティンからラゴンダという車名の高級4ドアセダンとして復活するんですね、それがこの車です」
ただならぬ雰囲気を放ってますね。
H「この車は1985年のバブル直前に出た車で、ロールスロイスとかベントレーとかよりも高い超高級車。ただでさえ高くて買える人は少ないのに、元々ディーラーさんが新車の時にこの車は厄介だからと言ってあまりおすすめしなかったので、乗ってた人はすごく少なかったみたいですね」
どの辺が厄介なんですか?
H「とにかく壊れるんです。あんまり有名じゃないのでパーツも苦労するし、この車を扱えるメカニックも少ない。直す側も苦労します。結構な車好きの方でも知らないことが多いんですよ。なので半分物珍しさで置いてるんです(笑)」
この車のデザイン面での魅力はどの辺りになりますか?
H「このライト。変ですよね(笑)。 これはラゴンダのシリーズ2になるんですけど、ライトの上に更にリトラクタブルライトが付いてる。あとは、ボディが薄っぺらいから長くて綺麗。内装も赤で豪勢な感じがしますよね」
うわっ!内装は全部オレンジなんですね!
H「バブルの頃の最高峰のモデルですから(笑)。欲しい人がいても、なかなか買えなかった。そうそう、このメーターがブラウン管なんですよ! アナログすぎて今じゃ信じられないですけどね。今だからこそめちゃくちゃカッコよくて、これこそお洒落だと思います」
ホントにカッコイイですね! 今乗るからこそクール。これこそヘリテージカーの醍醐味ですよね。
H「そうですよね。自分たちが生まれる前の車なんで。こんなかっこいいものが残ってるんだぞ! というのをちゃんと残していくのが役割と思っています。歴史の結晶というか…今だと、もうこういうデザインは作れないですから。デザイン的にも機能的にも無駄というか(笑)、遊び心がとても多い。そのためたくさん故障もしますが、すごく味わい深いんですよね」
では、ヘリテージカーならではの魅力と、想いを教えてください。
H「車と自分の距離感の短さというか…今の車は、車を動かすのにありとあらゆる電子デバイスを仲介してるじゃないですか。でも古いのはコンピューターなんて無く、すごくシンプル。エンジンの音とか匂いとか、ガッと入ってきたり。エンジンとか鍵とか、今は全部リモコンだけど、動作ひとつとってもアナログなところも楽しいんですよ。今の車は無茶しても壊れないし本当によくできた道具って感じですけど、古いのはちゃんとメンテしてあげないと、機嫌悪くなっちゃう。本当に、車っていうより相棒って感じですよね。実物にエンジンかけて、動かして…全然迫力が違うんです。こういうの楽しさに溢れた車たちを、書類とかネット上のデータじゃなくて、形で残していきたいと思っています」
最後に、このAUTOMOBILE COUNCILに参加して感想をお願いします。
H「すごく良い経験になっています、1年前から始まったイベントだと思うんですけど自分たちも憧れていたので、出展できたって嬉しさが大きいです。あとは、もっと他県の遠いところからも珍しい車を持ってきて欲しいという思いはありますね。自分たちは出展させて頂けた事に、嬉しく思います」
Photograph:Taku Amano
Edit & interview::Tuna
Text:Chihiro Watanabe
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