ゴルフのヘリテージカーならここでしょ。
憧れのヘリテージカー。実際購入するにあたり、選び方や知っておきたいことを、専門家に指南してもらう新企画。それぞれのクルマの歴史や他にはない特徴などとともに、玄人が唸る希少なクルマも教えてもらいました。
3回目となる今回はゴルフII専門店の「スピニングガレージ」。素晴らしいコンディションのGTIやカブリオレなどがズラッと勢揃い。
フォルクスワーゲン・ゴルフを専門に扱っているスピニングガレージさん。特にどのへんの年代を得意とされているのでしょうか?
田中氏(以下T)「基本ゴルフIIなので84~92年の間ですね。それとフォルクスワーゲンのワンボックス以外がメインですね。ゴルフとかジェッタ、カブリオ、コラードなどです」
フォルクスワーゲンはドイツの車ですよね、なぜ、ゴルフIIにこだわるのでしょうか?
T「フォルクスワーゲンのゴルフっていうと、今でも健在ですよね。そのご先祖様みたいな感じで、それの二代目になります。現代のコンパクトカーの源流みたいな存在で、とにかく良く出来ているんですよ。世界標準のベーシックなコンパクトカーといった感じ。80年代の車になるんですけど、時代背景的に余計なものが付いていないんです。ちょっと面倒くさい表現になるんですけど、この時点で、機能的には完成されていると思っているんです」
ということは、ヘリテージカーの入門としてはうってつけな存在という事でしょうか?
T「まさしくそうですね。初めての方には…CLIなんかが、おすすめですよ」
この、CLIの特徴はどういった部分になりますか?
T「CLIっていうのはグレード名で、一番ベーシックなものになります。これは91年の後期型なので一番玉数が多く、修理の部品も一番困りにくいです。部品も大体うちでストックしています。珍しいグレードのものですと、たまに持っていなかったり、発注しても何ヶ月とか待ったりすることもありますから」
デザイン面の魅力的な点はどの辺りでしょうか。
T「とにかくベーシック。シンプル。デザイン的にはすごく無駄がないというか、デザインの為のムダが無いんです。全部機能的に意味のあるデザインのみで構成されているから、まとまっていて凄くわかりやすい。室内にも余計なものは付いていないですし。運転はすごくしやすいです」
しかも結構コンパクトですよね。
T「車体はコンパクトなんですけど、中は広いので居心地はいいですよ。トランクとか後ろのシートも広くて、荷物も結構載るし、都内とかも走りやすい。“ジャージの二人”っていう映画があるんですけど、主人公の車が全編ゴルフIIなんです。リアルな生活感が出ているというか、まさしくありのままのゴルフIIが描かれていて、良いですね」
このCLIはおいくらですか?
T「これは139万ですね」
値段的にも、入門にはもってこいな感じですね。
T「基本的に頑丈な車なので、変なトラブルも起きにくいですね。若い人とか、初めてだけどクラシックな車がイイっていう人には、すごく向いていると思います。自動車の歴史的に見ても良いポイントというか、良いポジションにある車なので、これを経由していろんな車にいくっていう方も多いですよ。あと、色んな車を沢山乗ってきたが、最後にこのゴルフIIに戻ってくる人も結構いるんです」
原点に戻る、という感じでしょうか。
T「そうですね。自動車評論家系の方々とか自動車業界の方々が『やっぱりゴルフIIは良いよね!』って言うことが多いので、やはり面白いんだと思います」
では逆に、一周回って戻ってくるような玄人の方におすすめの車はありますか?
T「玄人向けですと、カブリオとかですね。この93年式の。」
この車の特徴はどの辺りでしょうか?
T「これは1万4千キロっていう、走行距離の非常に少ない個体なんです。うちの店が丁度今年で20期目なんですけど、店始まって以来の内装コンディションですね。僕が店を始めた当時でも、これだけ内装の綺麗な個体はなかったので。“後から仕上げて良くなったものでは出せない良さ”みたいなのがあるんです。後から張り替えたり、塗り替えたりして良いものはそれはそれは出来ますけどね。そういうのとはひと味違う良さがありますね。あと、玄人的な視点ですと、雨天未走行なので下回りがすごく綺麗だとか、そういう所も価値が高いポイントです」
雨天未走行って、雨の日は乗っていないって事ですか!?
T「そうなんです。晴れの日しか走らなかったということですね。前のオーナーもそうですし、その前の人もそうでしたね。泥がはねて付く、奥の方の汚れがないんですね。細かいサビも全然ないですし。そういうのを聞いて買ってくださる方もいるんです」
たっぷり愛情の注がれた車両なんですね。
T「見た目にも表れていて、細かいところですけれど内装の革のシワの少なさとかですかね。あとはカブリオだけは、IIの世代もⅠの世代のシャシーがベースなんです。ゴルフⅠのデザインを踏襲した内装なので、そこがより70年代の香りが残っていていいなっていう」
では最後に、現代でも衰えないヘリテージカーの魅力とはなんでしょうか?
T「80年代のゴルフIIなのでヘリテージカーっていうのとはちょっと違うとは思いますけど、いわゆるヘリテージカーって、維持するだけでも大変な部分が多いと思うんですけど、この世代の車はそれほど大変じゃない。でも、これより後の世代の車に比べると、コンピュータ制御の介入もないですし、車と人間がダイレクトに繋がっていて、それが運転の楽しさに現れているんです。
今の車には失ってしまっているものは残っていて、でも本当のヘリテージカーに足りないものがこの世代にはあるっていう。ヤングクラシックというか、ヤングタイマーとか言われてますけど。それがこの世代の魅力だと思いますね。
ヘリテージカーだとやっぱり趣味としてある程度認知されている分野だとは思うんですが、車だけに限らず全部ヘリテージになりかけの新しい世代で定評を得ているものは結構肩身が狭かったりするのですが、この辺のヤングクラシックとかヤングタイマーだとかは、きちんと文化に根付かせても良いもの。『ゴルフIIを1台でも多く残す』というのが、僕の人生のテーマですね」
Photograph:Taku Amano
Edit & interview::Tuna
Text:Chihiro Watanabe
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