「色褪せないクラシックレンジの魅力」
憧れのヘリテージカー。実際購入するにあたり、選び方や知っておきたいことを、専門家に指南してもらう新企画。それぞれのクルマの歴史や他にはない特徴などとともに、玄人が唸る希少なクルマも教えてもらいました。
第2回目は「RANGERS」。独自のルートで本国UKから車を仕入れるランドローバーを中心に、人気の高いディフェンダーとレンジローバーを展開しています!
RANGERSはどのようなお店でしょうか?
篠原氏(以下S)「イギリスのランドローバー車全般、特にクラシックレンジをメインに取り扱っています。ランドローバーは今でも王室御用達で、パレードする時など同じイギリスのロールスロイスを使わないで、レンジローバーを使ったり。いわゆる『文化を売っている』という感じのメーカーなんです。元々英国貴族が狩猟に使う際に用いられ始めたのがきっかけで、四輪駆動になったもの。ランドローバー自体が好きという方も多いですが、イギリスが好きだからランドローバーを選ぶ方も多いんですよ。作業としては、オーバーホールやビスポークプランというオーダーメイドのレストアを行っています。ただ特色として、一般の車屋さんだと『仕上げてから売る』販売店さんが多い中、うちは仕上げる前の状態から、お客さんとどうしましょうか、って。話し合って進めていくやり方をとっていて、ビスポークの意味合いを強くしてやっている車屋になります。もちろん新しいモデルも売っています」
特にどの年代をメインとされているんでしょうか。
S「そうですね。クラシックレンジというのは“レンジローバー”の、初代モデルを指すもので、70年代からある車なんですけど、その中でも90年から95年のクラシックレンジローバーをメインで取り扱っています」
ランドローバーの特徴を教えてください。
S「ランドローバーは四駆専門メーカーなんです。高級車としての快適性も持ちながら、川とか、オフロードとかガンガン入っていけちゃう走破性も持ち合わせてる。そんな遊び心もある車なんです。ただ、実際にそんな遊び方する人は少ないですが(笑)。ファッション系の方や、スタイリストさん、カメラマンさん、芸能人などスタイリングとして乗っている方が多いです」
イギリスではどのようなイメージを持たれている車なんですか?
S「イギリスってホワイトカラーとブルーカラーで階級が分かれています。レンジは、ホワイトカラーの人しか乗らない。僕ら、結構イギリス行くんですけど、向こうの担当の人に聞くと『レンジは僕らは乗っちゃ行けない』って言うんです。有名なパーツ屋さん、大きい会社に行ったりする時も、乗っちゃいけないって。『日本人はいいよね、関係なく乗れるのか』って言われて『あぁ乗れるよ。お金さえあれば乗れるんだ』って。向こうはお金があっても、地位が高くなかったら乗れない。面白いですね、レンジローバーは」
イギリス人が日本に来て、日本の若者がレンジローバー乗ってると「あいつすげぇの!?」と、なるでしょうか…。
S「そうですね(笑)。とにかく敷居の髙い車なんですよ。王室が使っている車っていうのもあるのかもしれないですね」
そうなんですね…。そんな中でも、ビギナーにお勧めの車はあったりしますか?
S「ありますよ!この後期モデルのレンジローバーですね。ディーラーの扱いは90年からで、90年~93年までが前期モデル。94年と95年の二年間が後期モデルになるんですけど、後期の二年間のものが狙い目です。後期に、エアコンがいまの代替えフロンを使う今のエアコンタイプに変わったんですけど、前期はフロンガスを使っていて、オーバーホール出来るんですけど、予算を頂いて40~50万かけてエアコン直さなくちゃいけない。なので、そうやって直していくと600万、700万…みたいにかかってしまうケースもあります。後期だと、運が良ければ200~300万でとかでも全然乗れちゃう車もあるよっていう感じですね」
この車のおすすめのポイントはありますか?
S「ドイツのフランクフルトショーを見に行った時、マンソリーっていうドイツのチューナーがあるんですけど、そこの展示車両がバイカラーで。「これクラシックレンジで出来たら素敵だな」って。そんな遊び心で、バイカラーにしてみました。オリジナルでは無いんですよ。後期モデルなのでエアコンとか心配ないところも安心です。あとはバンデンプラって言ってボディが長いモデル。大人が後ろの席で足を組めるぐらい広いんです。こういうの意外と嬉しいですよね。町中をゆったり流すにはもってこいです」
やっぱり、クラシックだと故障とかが気になります…。
S「埼玉県に自社工場がありまして、目黒でお預かりすることも出来て、もちろん代車のご用意もしています。こういう古い車だと「部品が心配だ」と皆さん言うんですけど、イギリスのパーツサプライヤーの代理店になっていまして、パーツの確保に心配はありません。今は一週間もあれば、空輸ですぐ届く時代ですから。うちはオーバーホールの場合、1年保証もつけています。それくらい自信を持って仕上げさせて頂いています」
長く乗るために、どういう気配りが必要ですか?
S「いわゆるオイルメンテナンスだとか、1年点検、車検をキッチリやって頂くこと。それを怠ってしまうと調子悪くしてしまいますね」
では、玄人向きの車はどちらになりますか?
S「これはレンジローバーのバンデンプラ。前期モデルですね。この前期モデルは内装に特徴があって、このデザインされたダッシュボードが左右対称なんです。ダッシュボードがボンネットの高さと同じで船みたいな形なんですけど、ちょうど乗馬しているときの目線と一緒で、すごく見切りが良くて気持ちいいんです。」
オススメのポイントは?
S「内装ですね。全て皮をコノリーレザーに張り替えてます。このバイカラー、1920年代のロールスロイスのシルバーレイスという車をイメージして作りました。実はこのカラーがバローロブラックっていうブラックと、ワインレッドがモンタルチーノレッドなんですよ。これ実はね、両方ともワインの名前から来ています。バローロワイン。モンタルチーノワイン。セカンドテーマはワイン好きに(笑)」
機能的なポイントは何ですか?
S「機能的なところは、さっきちらっと出ましたけど、乗馬のポジションのことをコマンドポジションっていうんです。馬を操るようなドライビングポジション。乗ってもらうとわかるんですけど、キャッスルっていうボンネットの張りがあるんです。乗って座って見ると、ここが見えるんですよ。キャッスルって「お城」じゃないですか。だからお城に合わせて運転してねっていう。みんなそうです。今のレンジローバーにも付いています。車ではじめて工業デザインとして認められてルーヴル美術館に飾られているんですよ」
ずばり、お値段は?
S「740万。ビギナーさん向けに紹介させて頂いた車は、550万です」
では最後に、レンジローバーを始めとする、ヘリテージカーの最大の魅力を教えてください。
「レンジローバーは、全体的には四角い形をしているんですけど、ところどころ丸みを帯びていて、四角さの中にも丸みがあるんですよね。デザインの妙といいますか、愛嬌を感じますよね。人それぞれ魅力を感じる部分は違うと思うんですけど、僕らは自由な発想で、僕らにとってヘリテージカーっていうのを自由に作って良いんじゃないかと思っているんです。僕にとっては、古き良き部分を綺麗にしながら乗る、最高の趣味って感じですね」
Photograph:Taku Amano
Edit & interview::Tuna
Text:Chihiro Watanabe
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