「飽くなき挑戦の歴史 —ロータリーエンジン誕生50周年—」をテーマに掲げたマツダ。プレスカンファレンスには、1973年の入社以来ロータリーエンジンとロードスターという、同社の二枚看板の開発に携わり、現在は商品本部でロードスターアンバサダーを務める山本修弘氏が登壇した。

1967年に発売されたマツダ初のロータリーエンジン搭載車であり、世界初の2ローター・ロータリーエンジン搭載車でもあったコスモスポーツ、日本車初にして、これまでのところ唯一ルマン24時間の総合優勝を果たしたマシンであるマツダ787B、初代(ユーノス)ロードスターなど、メーカー展示としては最多の7台を並べたマツダ。山本氏は2つの話題について語った。ひとつはロータリーエンジンの歴史を通じて、現在もマツダに受け継がれるヘリテージとDNAについて、もうひとつは昨年のオートモビルカウンシルで計画の存在が明らかにされた、初代NA型ロードスターのレストアサービスについてである。

2012年のRX-8の生産終了を持って、残念ながらいったん途切れてしまった、ロータリーエンジン搭載市販車の歴史。1960年代に始まったロータリーエンジンの開発は、政府主導による自動車メーカー再編の流れ(結果的には行われなかった)のなかで、マツダの生き残りをかけた戦いだった。

マツダが6年間かけて、ようやく実用化に成功したロータリーエンジン。軽量コンパクトでハイパワーというメリットを持つ未来のエンジンと賞賛されたが、1973年に起きたオイルショックによって、燃料消費が多いというデメリットが浮き彫りになり、一転して消滅の危機を迎えた。

社運を賭したこれら2つの戦いを、マツダが乗り越えるにあたって、3つの要因があったと山本氏は語る。1つめは、「もの作りの技術によって社会に貢献したい」という、創業者から技術者たちに受け継がれた志。2つめは、マツダがある広島で戦後の復興を進めた人々の、困難に立ち向かうチャレンジ精神が技術者の心にも刻まれていたこと。そして3つめは、オイルショック後の戦いの裏にあった、「ロータリー車のオーナーやファンを裏切ってはならない」という、技術者たちの強い使命感であるという。

ロータリーエンジン開発とそれに立ちはだかる障害に、果敢に挑んだ先達の姿から生まれたのが、「飽くなき挑戦」というマツダの開発スピリット。マツダの三次テストコースには、1991年のルマン総合優勝を記念して「飽くなき挑戦」と刻んだ石碑が建てられているそうだ。

会場に展示されている歴代のロータリー車や初代NA型ロードスターをこよなく愛し、乗り続けているオーナーに対する感謝の念と、彼らの期待に応えたいという思いから企画されたのが、初代ロードスターのレストアサービス。オーナーやショップとの情報交換を重ねるなどして検討した結果、事業化が決定した。

今後は2017年内にユーザーからの受付を開始し、2018年初頭より実際のレストア作業を開始する予定。また、ビニール生地のソフトトップ、ブリヂストン製タイヤSF325、ナルディ製のウッドステアリングとシフトノブも復刻製作し、2018年初頭から発売予定とのこと。会場にはそれらを使ってレストアされた1990年式Vスペシャルと、単品パーツも展示されている。