4年ぶりにオートモビルカウンシルに帰ってきたトヨタは、「トヨタ クルマ文化研究所」という見慣れない看板をブースに掲げていた。それもそのはず、プレスカンファレンスに登壇したトヨタ博物館 館長の布垣直昭氏によれば、これは架空の研究所なのだという。

布垣氏いわく、トヨタおよびその周辺には、ヘリテージカーに関する活動を後押しするさまざまなビジネスやムーブメントが萌芽しつつある。それらひとつひとつは小さな点かもしれないが、点と点と結んでいくことでやがては大きなうねりになっていくのではないか? そうした動きについて広くクルマ好きに問いかけ、未来につなげることができればという思いを込めて、クルマ文化研究所と名付けたと語った。
ブースには、そうしたビジネスやムーブメントの具体例が3つ、それらの活動を象徴する車両3台を含めて展示された。

旧車に興味はあるが、所有するのはハードルが高いという若い世代にも、見て、触れて、そして実際に乗って楽しむ機会を提供する、旧車趣味の新たなスタイルというわけだ。このコーナーには実際にレンタカーとして使われ、現在はオーナー募集中という初代トヨタMR2が展示されている。

ふたつめはTOYOTA GAZOO Racingが提供する「GRヘリテージパーツ」。愛してやまない旧車を乗り続けるために行っている部品再生産プロジェクトである。数年前にA70/80スープラ用から始まり、現在はトヨタ2000GT、AE86、40ランドクルーザー、SW20 MR2用の一部パーツが用意されている。このコーナーには電動(EV)化されたカローラ・レビン 3ドアGT(AE86)が展示されていた。

そして3つ目は、「ヘリテージを未来に活かす本気のレストレーション」と謳われた、今回の目玉であるトヨタ・オリジネートレストレーション。通常のレストアとは異なり、数あるトヨタの工場のなかでもいわば元締めである元町工場のスタッフが、先人の挑戦のDNAを学びながら工場出荷状態に復元することに挑んだ、と胸を張るプロジェクトだ。

ビジネスではなく、トヨタのクルマづくりの魂を残し、引き継ぐための人材育成を目的とする試みというが、これまでに初代パブリカ、そしてこのコーナーに展示された初代クラウンRSがレストアされている。ホリゾン・ブルーという純正色に塗られたクラウンRSは、たとえば配線のカプラーまでオリジナルと同様に再現された、いわば「新車のクラシックカー」。乗れば新車の乗り味がわかるという。

こうした3つのプロジェクトと3台の車両が紹介されている「トヨタ クルマ文化研究所」。布垣氏の「けっしてここ1回限りではなく、今後も続けていく覚悟を持ってみなさんにご提案させていただく」という言葉が印象的だった。