車が映っているということに関係なく、「デラニー&ボニー&エリック・クラプトン/オン・トゥア」というこのアルバムはジャケット・デザインの優れもの的な雑誌の特集や展覧会などがあると必ず選ばれてきた。
砂漠に停められたロールスロイス・シルバー・ドーンの窓から出ている足が誰のものだかは知らないが、同じ時にトム・ウィルキーズとバリー・フェインスタインによって撮影された裏ジャケットには同じ砂漠の道を楽器ケースやバックを持って步く“デラニー&ボニー&フレンズとエリック・クラプトン”(これがきちんとしたクレジット)が映っている。そのメンバーというのが超強力。デラニー・ブラムレット(リズム・ギターとヴォーカル)、ボニー・ブラムレット(ヴィーカル)、エリック・クラプトン(リード・ギター)、ディブ・メイソン(ギター)、カール・ラドル(ベース)、ジム・ゴードン(ドラムス)、ボビー・ウィットロック(オルガンとヴィーカル)、ジム・プライス(トランペットとトロンボーン)、ボギー・キーズ(サックス)、テックス・ジョンソン(コンガ、ボンゴ、ドラム)の10名の名前を並べると、そのまま“ロック名鑑”のようになるし、1969年末のイギリス・ツアーを収録したアルバムにはヴォーカルとしてリタ・クーリッジの名前もクレジットされている。
そして中身がまた凄い。「ノック・オン・ウッド」の大ヒット曲で知られるエディ・フロイトの曲をカバーした「シングス・ゲット・ベター」から「のっぽのサリー」「ジェニ・ジェニ」「ガール・キャント・ヘルプ・イット」「トゥティ・フルッティ」の4曲からなる「リトル・リチャード・メドレー」までの流れのグルーヴ感は、本物のミュージシャンたちが一体になった時に生まれるグラーヴ感で聴く者を一気にひきこんでしまうし、エリック・クラプトンののびのびしたワイルドなギター・プレイも時代を感じさせてくれる。
デラニー&ボニーはこの3年ほどの活動でこのアルバムを含む5枚のアルバムを残し、解散してしまうが「いとしのレイラ」の大ヒットを放つエリック・クラプトンのドミノズはここから生まれたのである。

ON TOUR WITH ERIC CLAPTON /DELANEY & BONNIE & FRIENDS
WARNER MUSIC JAPAN