「物のストーリーを通して、古い文化を若い人にも伝えていきたい」
ウェアから小物まで「車やバイク」に似合うアイテムを専門的に扱うお店「Motorimoda」。ヨーロッパデザインを中心に、ここでしか手に入らない上質アイテムがずらり。CEOの岡林さんにその想いや愛車の「Mercury Cougar 68年式」について伺ってきました。
まずヘリテージカーを好きになられたきっかけは?
「元々はオートバイが好きで学生時代からヘリテージのバイクに乗っていました。ヘリテージカーは仕事を始めてから。お客様とか同業者で古い車を好きな人や、乗ってる人が周りに増えてきた上に、商品の買い付けでヨーロッパに行く機会が非常に多くて、ヘリテージカーのイベントや催事に行く機会も増えてきたんです。興味を持ったのはそこからですね。仕事柄、商品をバイイングする際に見た目のインスピレーションや直感、衝撃は重要で。ヘリテージカーは、デザインに凄く自由度があるし、良い意味でお国らしさや民族性が車に出てる。ヘリテージカー好きが周りにできたのと、仕事とリンクしている部分の両方で、好きになりました」
ヨーロッパはどの辺の都市によくお仕事で行かれるんですか?
「イタリアとフランスが圧倒的に多いですね。そしてドイツやスペイン…西ヨーロッパも仕事柄よく行きます。ここにある商品も、イタリアからフランス、イギリス、スイス、ドイツの取引先が多いです。新しい商品を見つけに行くときに、一緒に車のイベントや見本市に行ったりしています」
元々バイクが好きだったということですが、何に乗っていたんですか?
「学生の頃、初めて買った外車はハーレーなんです。大学の卒業旅行でアメリカをハーレーでまわったんですが、アメリカの情景にインパクトを感じて、凄いってなりましたね。でも社会人になってヨーロッパに行った時、そこでヨーロッパに魅せられてしまったんです。でも、ヨーロッパのものに触れて行くと、アメリカが懐かしく思えたりして。次に車が欲しいなって思った時に20代の頃アメリカ車が欲しかったことを思い出したんです」
それで購入された愛車の1つがアメリカ車の「Mercury Cougar 68年式」ですね。
「はい。最初は日本車に乗っていましたが、ここ十数年はイタリア車。普段乗る車と遊びで乗る車は使い分けていて。これは遊びで乗る車で、気分転換になるというか、乗ってて楽しい車です。クーガを選んだ理由ですが、昔、特に好きだったアメ車は60年代後半に製造されていたものなんです。人によってはアメ車って不良っぽいイメージがあると思うんですが、でも僕はそうなりたくてこの車を選んだわけじゃなくて。マッスルカーって言われる、アメリカの車が力強いパワーのある車を造っていたのが60年代後半で、各メーカーがしのぎをけずってパワー競争していた時代。ヨーロッパ車みたいにデザインが洗練されているわけではないけれど、アメリカの国力を象徴するような、力強さを感じるんです。マッスルカーと呼ばれるものはいくつもあるけど、あまりメジャーじゃないのがよくて、マーキュリーは〝通〟な車なのかなと」
全体的なデザインで特に気に入っているところはどこですか?
「当時の時代特有のカクカクとした無骨なスタイル、全体的な強さを感じるフォルムですね。僕は当時のアメ車の力強さというか、みなぎっている感じのインパクトがすごく好き。パッションみたいなものをすごく感じるんですよね。あとは大きさもあります。やっぱりアメ車っていったらある程度大きいのがアメ車らしい。コンパクトというよりフルサイズの方がアメ車らしいっていうか」
内装はいかがでしょうか?
「そうですね、メカニカルなところも特にいいなって。見た目ですね。あとはエンジンでいうとV8。V8のエンジンというのは、アメ車を象徴する上でマストなところなのかなって。僕自身がヨーロピアンな感じのセレクションのお店をメインでやっていますが、決してアメ車ばっかり追い求めてるわけじゃなくて、箸休め的な感覚です。今こういうの乗らないんだろうなって思って。だから、一生の内乗りたい車が何台かあるとしたら、そのうちの1台。ちっちゃい車も乗りたいし、色んな車乗りたいから頑張って仕事してるって感じですね」
クーガではどのような遊び方をされていますか?
「天気のいい朝とか、道が空いている時に幹線道路を流したりとか。古い車なので、あまり遠出したり炎天下の中を走るっていうのはリクスがあるんで、いたわりながらですね。車に優しい気温とか、天候にあわせて、今日だったら大丈夫だろうって時にたまに乗ってます」
では、「モトーリモーダ」についてですが、どういうお店なんですか?
「主にヨーロッパを中心に、車やバイクを愛する人が身につけるものを提案するセレクトショップです。僕はこの仕事をやる前に貿易会社に勤めていて色んな国と輸入をしていたんですが、海外に行くとすごく古い車とかバイクを大事にするし、イベントもたくさんあるんですよね。そこでは、彼らが身につけているものもそれぞれこだわりがあって、自分が大事にしているバイクや車にあわせたコーディネートをしてるんですよ。当時の日本だと、ヘリテージカーに乗っていても、身につけるものにそこまでこだわってることってあまりなかったんです。なので、海外のように日本でも車や時代にあうスタイルやファッションがあってもいいんじゃないかと思ったのが始まりですね。やっぱりヨーロッパは、車やバイクのカルチャーが社会的地位も高い。日本だとどうしても古い車に対して少し否定的な人が多い。でもそれは、車だけとか走ってる光景だけを見てそう思われているのかもしれないけど、実際に乗ってる人の格好であったり仕草であったり行く場所だったりを含めると、決してそうではないんです。せっかく車があるんだったら、やっぱりそれに乗る人が身につけるものもキーになるものなのかなって。それで、様々な国にいって、いいなと思ったものをセレクトして、売るっていうのが僕たちのお店になるのかな」
お店は何年目になるんですか?
「丁度去年が10周年を迎えて、今年11年目かな。直営店姉妹店も含めると全国に7店舗あります。フラッグシップはこの銀座店です」
ヨーロッパで買い付けする、その時のセレクトの基準はなんですか?
「あまり、特定のこの時代、このメーカー、というのに絞り込みすぎないようにしてますね。絞り込むっていうのも大事なんですけど、出来るだけ最大公約数の人に使って頂けるようなブランドとか、着こなしが出来るようにと考えています。そういう意味では、特定の車両メーカーとかブランドが入ってるウェアっていうのはあまりなくて、比較的ユニバーサルに着れるようなものが多いですね。あとは着やすさも重要で、50代60代のお客様も多いので、車を運転する時にちゃんと運転しやすい機能を持っているのかって所は大事ですね、ただ車のブランド名が入ってるからそれ、というよりも、ドライバーのことをちゃんと考えてるようなアイテムをセレクトしています。あとは、ぱっと見はわからないけど、車が好きな人ならわかるエッセンスだったり、遊び心がある商品には食いつきますね。アパレルブランドだけで何十何百ってあるわけじゃないですか。別に車乗る時なんてどこのTシャツでも良かったりするけど、それをいかにこの服を着て運転したいな、あ、この服わかるわかるっていうのを自分なりに理由づけしてお客様に届けたいと思ってます」
特にオススメのものはどれでしょうか?
「扱ってる商品の7割はうちでしか輸入してないんですが、この〈フェルナンドバックマン〉というフランスの商品なんかは、キルト地で薄手だから運転するときもごわつかないです。大事なのは、車乗ってる時だけじゃなくて、車を降りてホテルのロビーやレストラン行ったりするエレガンスも必要になってきます。フォーマルまでいかないけど、カジュアルよりもう少し上まで使えるような。これも、〈アランフィガレ〉ってブランドのドライバーズジャケットなんですが、よく見るとタイヤのホイールみたいになってたりとか」
なるほど、では特に人気があるもの、珍しいのはどれでしょうか?
「〈Warson Motors〉というスイスのブランドがあるんですが、F1ドライバーのオマージュモデルのポロシャツが特に人気があります。シフェール、セベール、レガツォーニのモデルが人気ですね。この3人は、60年代、70年代にすごくチャンピオンになったとかそういうレジェンドはないんだけど、レースを見てる人達の中には凄く記憶に残る、そういうドライバー達です。珍しいものだと、アイルトンセナのヘルメットですかね。丁度今年はセナのF1初優勝30回目の記念の年なんですよ。このヘルメットは限定のもので、ちょうど30年前にセナがF1で優勝した時のカラーリングなんです。レプリカだけど、ちゃんとセナのヘルメットをカラーリングした人が、またカラーリングしてるんですよ。値段は少し高いんですけど、すごく珍しいものだと思います。あとは限定ポスターなんかも人気ありますね。ここにしかない時計や小物などもあります」
では、ショップとしての今後の目標や、お客様に伝えたいことは?
「やはりヘリテージカーとかヴィンテージバイクなどの古いもの、古い文化というのは、若い人にも伝えていかなければいけないなと思ってます。車やヘリテージカーに興味がなかった人達にも、身につけるものから親しむきっかけになってくれれば良いなと。それに、アイテムやグッズのモチーフの由来をわかってくると、特定の車がイメージされたり、昔こういうレースがあったんだ、とか僕自身も知れば知るほど興味が出てくる。こんな昔からこんなレースやってるんだ、こんな昔からこういうメーカーって存在するんだ、とかね。歴史や時代背景を知るっていうことも、日本だけではなく、世界中の若い人にもっと繋げていきたいです。僕も様々な国に行きますが、車やバイクの話だけで、人種とか国とか世代関係なく色んな話が出来るんです。それは共通の一つのランゲージですよね。すごく楽しいと思う。車やバイクは僕たち用意は出来ませんけど、やっぱりそれに乗る時に身につけるものを通じて楽しみを共通していく、そういう存在でありたいなと思っています」
最後に、あなたにとってヘリテージカーとはどういう存在でしょうか?
「今でもずっと憧れ。憧れで、いつか手にしたいもの。その為に仕事も頑張るし、家族サービスもするし。憧れだけで終わらせたくないものですね。いつかは欲しいという気持ちが、仕事を頑張ったり、ようは生きるモチベーションになったりすると思うんです。ヘリテージカーっていうのは、ずっと遥か彼方で輝いていて欲しいものですね。どう考えたって全てを手に入れる事は出来ないので、次はあれに乗りたい、これに乗りたいって、その気持ちを楽しんでいくのが大事だと思います」
モトーリモーダのHPはこちら!
http://www.motorimoda.com/
Photograph: Taku Amano Edit & Interview:TUNA Text: Hina