初回から3年連続での出展となるマツダ。今回のテーマは「MAZDA COMPACT HATCHBACK STORY」。1980年にデビュー、爆発的にヒットして「赤いファミリア」が社会現象にまでなった5代目「ファミリア」から、昨秋の東京モーターショーでベールを脱いだ「魁 CONCEPT(カイ コンセプト)」に至るマツダの歴代コンパクトハッチバック5台を展示。常にその時代のマツダの思想を反映し、最新技術を投入してきた中核車種の歴史を紹介している。プレスカンファレンスには4代目から歴代ファミリアのデザインを担当し、初代アクセラのチーフデザイナーを務めたマツダOBの鈴木英樹氏と、初代アクセラのデザインにも携わった、魁 CONCEPTチーフデザイナーの土田康剛氏が登壇。コンパクトハッチバック師弟デザイナーによるスペシャルトークショーが実施された。

鈴木氏いわく、一世を風靡し、第1回日本カー・オブ・ザ・イヤーを獲得した5代目ファミリアのデザインにおける挑戦は、徹底してプロポーションにこだわったことだという。「すべてのピラーの方向を延長すると1点に収束する台形フォルムを採用、世界標準に敵うコンパクトカーに仕上がった」。

それに続く歴代ファミリア、および派生車種であるアスティナやランティスなどにも携わった後、1996年に鈴木氏は米国カリフォルニアにあるマツダのデザインスタジオに移動。2000年に帰国後、初代アクセラのチーフデザイナーに就任した。

米国勤務時代に鈴木氏が痛感したのが、広いアメリカ大陸でも、またヨーロッパの伝統ある風景のなかでも、けっして埋没しない存在感の強いデザインの必要性。それが初代アクセラのデザインテーマとなった。

世界への挑戦となった初代アクセラのデザインにおいて、鈴木氏のもとで土田氏が強く意識したのが、リアデザインの重要性。「日本では前から見た顔つきを重視するが、世界、たとえばアメリカのフリーウェイなどでは、ドライバーは延々と他社のお尻だけ眺めていることになる。それだけに存在感のあるリアデザインを心がけた」と述べた。

ファミリアからアクセラへ、コンパクトハッチバックのデザインにおいて継承されたのは、鈴木氏によれば「いかに80点主義から100点に引き上げ、さらには超えていくかということ」。コンパクトカーで、マツダの基幹車種となれば、会社の期待も大きいし、制約も多い。「それらの要望に応えようとすると没個性になりがち。いかにそれを打ち破り、マツダらしさ、スポーティさのあるデザイン、ひいては世界で戦えるデザインにしていくか」ということが継承されてきたという。

鈴木氏から引き継いだ土田氏が、アクセラから魁 CONCEPTへの継承と意識していることは、感性に訴える「ときめき」のデザイン。魁 CONCEPTのデザインコンセプトは「色気のある塊」。強いキャラクターラインを用いず、光のリフレクションだけで躍動感を表現し、見る者を魅了するという考えは、「魂動─Soul of Motion」をテーマに掲げたマツダデザインの次世代の方向性を示唆している。それはまた、日本のブランドとして、日本の美意識である「引き算の美学」を反映したものでもあるという。

自動車関連の話題といえば、自動運転やカーシェアリングなどが真っ先にあがり、人とクルマのつながりがどんどん希薄になりつつ現代。「こんな時代だからこそ、人とクルマを感情的につなげたい。それこそが魂動デザインの本質であり、絶えず進化していきたいと考えている。ぜひ今後も期待していただきたい」と土田氏が結び、スペシャルトークショーは終幕した。

なお、このコンパクトハッチバック師弟デザイナーによるスペシャルトークショーは、会期中、以下のスケジュールで実施予定。
8月4日(土) 11:30〜 15:30〜
8月5日(日) 11:30〜 15:30〜