名門メーカーが威信を賭けて開発したハイテクマシーン。操るのは F1 パイロットを多数含む一流 ドライバーたち。毎戦、いや毎ラップ、接触も厭わない激しい戦いを演じる。それがDTMでした。オーバーフェンダーと空力パーツが全身を飾り、そのアウタースキンの下には高度な技術が隠される。市販車の開発段階から、DTM参戦が織り込まれた生粋のツーリングカー・レーサーたち。その主役である「BMW M3 シュニッツァー」、「メルセデス・ベンツ 190E 2.5 16 Evo.II AMG」、「ALfa Romeo 155 V6 Ti アルファ・ コルセ」。3台のワークスマシーンが同時に集まるのは、AUTOMOBILECOUNCIL2022だけ。この機会をどうぞお見逃しなく。

DTM BMW M3

DTMの前身であるDRMの時代からBMWはドイツ・ツーリングカーレース、そしてヨーロッパ・ツーリングカー選手権の代表選手だった。流麗な3.0CSLがサーキットで華々しい活躍をする写真に胸を焦がしたファンも多いだろう。

しかし87年DTMに参戦開始したM3は、バイエルンの象徴とも言えるストレート6ではなく4気筒2.3ℓユニットを搭載していた。クランクシャフト長が短い直4の方が、高回転/高出力を期待できたからだ。

名将パウル・ロシェのこの目論みは見事に当たる。デビューイヤーにして全10戦中5勝という圧倒的な勝率を誇り、シリーズチャンピオンの奪取に成功。88年、89年とシリーズ3連覇を果たすほど、当時無敵の戦闘力を誇った。

1990 DTM Mercedes-Benz 190E 2.5 16 Evo.Ⅱ AMG

ラグジュアリーかつ権威的なイメージを払拭し、メルセデス・ベンツに若々しくスポーティーなイメージを植えつけるべく開発されたのがこのマシーン。4気筒2.5ℓエンジンを開発したのは英国の有名レーシングエンジン・コンストラクターのコスワース。

しかし宿敵BMW M3を打ち破るために、何より特徴的だったのは大胆なエアロキットを採用したことだ。極端に低いエアダム、ティアドロップ形状のオーバーフェンダー、高く聳えたリアウイング等は、500台が生産されたロードゴーイングカーにも標準装備された。

90年からDTMに参戦開始、91年こそアウディに敗れたが、92年にドライバーズ・タイトルのワンツースリーを独占するという快挙を果たした。

1993 DTM Alfa Romeo 155 V6 TI

ドイツ・ツーリングカー選手権(DTM)にイタリアから送り込まれた刺客がアルファ・ロメオ155V6 TIだ。車両レギュレーションがより大きな改造を認める93年シーズンから参戦を開始。エンジンは高度なチューンが施されたV6 2.5ℓ。アバルトがWRC仕様のランチア・デルタ・インテグラーレ用に開発したフルタイム4WDと組み合わせたモンスターだった。

ドライバーの布陣もニコラ・ラリーニ、アレッサンドロ・ナニーニといった元F1スターたち。チーム監督も元ランチア・ワークスドライバーというその陣容からもわかるように、まさにイタリアン・オールスターチームを乗せた黒船が来襲したかのよう。デビューイヤーで22戦中13勝を記録。うち11勝を挙げて別格の強さを見せつけたラリーニがチャンピオンの座についた。