「クラシックカーは、その時代の最先端や夢が詰まこまれたもの」

第一回目の石田スタイリストさんから「とても渋いクラシックカーの乗っている人がいる」と紹介してもらったのが、フォトグラファーの横井さん。最近購入したという’85年式トヨタクラウンは、深めのワインレッドがとってもクール。「年配の方々が良く見てきて、無言で親指をたててグッド!というサインをもらったり」と横井さんが言うように、高級車として時代を超えて愛されるデザイン。お気に入りポイントなど、車への愛を語ってもらいました。

横井さんはフォトグラファーとして活躍されていますが、この職業を目指そ うと思われたきっかけは何でしょうか?

横井氏(以下横)「父がアートディレクターで母がエディターなので、小さな頃からこの業界に接していました。高校生の時に父からNikonのフィルムカメラをもらって、写真が面白くなって。大人になってカメラマンでもある熊谷隆志さんのアシスタントになりました」

アシスタント時代に学んで良かったと思う事は何でしょうか?

横「通常、フォトグラファーのアシスタントというのは写真のことしかやらないのですが、師匠がカメラだけでなく、スタイリング、店舗デザインのディレクションなどもやっていたので写真以外の世界も経験できたことです。石田スタイリストとはその時代の仲間で、僕もスタイリストの方の手伝いをやったり彼も彼でカメラのアシスタントをやったりしたのですが、それが逆に良かったと思います。今、独立して写真を撮るとき、スタイリストの大変さや苦労もわかるし、周りに優しくもできるので」

では愛車のことについてですが、トヨタ クラウンの’85年式。職業柄、日々乗るものかと思いますが、これを選んだ理由は何でしょうか?

横「勝手なイメージですが、カメラマンは四駆に乗る人が多くて、『っぽいよね』っというのとは違う所を攻めたい、人とは違う方が、という考えで。前はランクルやベンツの古い型に乗りたいと思っていた時期もあったのですが、流行ってきたのでしっくりこなくなって。父親がアルファロメオに乗っていたり、師匠の熊谷さんも昔古い車に乗っていたりと、その影響もあってかクラシックカーが好きで。国産のセダンをネットで探していたのですが、そんな時にこのクラウンを見つけました。御殿場にあるディーラーさんの倉庫に10年以上置いてあるというもので、実際見に行ったら状態も良いし『やっぱりいい』と即決しました。写真もモノ選びもそうですが直感を大切にしていて、この車もグッときて。実際乗車してみて感じたのが、この車に停まって乗っていると年配の方々がよく見てくるんです。皆さんが車を持ち出した頃の憧れだったからですかね」

ディテールで気に入っていることろはどこでしょうか?

横「まずはオーディオで後部座席からも操作できたり、後ろにミニクーラーボックスが付いていたり、今の車にはない機能があってそこが良いです。またダークなエンジ色も好きで、内装も統一されているのがカッコイイ。職業的にカメラ機材などを積むのですが、トランクが広いので問題なく積めるのもポイントでした。あとは、エンジン音の体に響く感じやサイドブレーキをひいた時の音も好きで、乗り心地が良いとされている静かな車より逆に音がある方が乗り心地が良いような気がします。カメラもそうですがアナログカメラの音とかって『シャッター音がやっぱりいい』っていうのと同じで、デジタルとアナログの違いはあります。あと、スピーカーも結構状態が良くクリアな音も気に入っていて、カセットも聞けるので、実家でテープを探して聞いてみたいです。運転席など内装デザインもシックで気に入ってるのですが、美しさを邪魔しないようにETC車載機はハンドルの下部分につけました」

購入されてまだ2ヶ月ということですが、これからどうつき合っていきたいですか?

横「状態が良く、前の方が綺麗に使ってくれていたんだな、と思っています。長くつき合っていくうちに表情なんかも変わってくると思いますが、それも含めてクラシックカーの魅力だと思います。乗れるなら手入れをしてずっと乗りたいですね。洋服やモノなんかもそうですが、ずっと同じものを使いたいと思うタイプなので」

将来、乗ってみたい車はありますか?

横「今はまずこのクラウンを大切にすることですが、おじいさんになった時に今の車がクラシックカーになっているわけで、それを欲しくなるのかもしれません。ただ、何でもアナログがカッコいいと思っているので、きっと欲しいと思う車の感じは変わらないと思います」

最後にクラシックカーの魅力とは?

横「自分が生まれる前であったり、自分が生まれてすぐの昔かもしれないですが『その時代の音をちょっとでも触れ合える』というか、その当時の雰囲気を感じられるところです。街中で様々な方が車を見て良いなって言ってくれたりするのはそういう事だと思いました。クラシックカーはその時代では最先端だった訳で。その空気が詰め込まれているのかなと思います」

photograph : Taku Amano
edit : Takafumi Matsushita
interview : Yuto Murakami