名古屋に本拠を置くエイム(AIM)は、自動車開発のエンジニアリング会社。1998年の創業以来、技術を磨くべくさまざまな挑戦を続けてきたが、有名なのは2005年から始めた耐久レース用のエンジン開発。同社が手がけた自然吸気の5.5リッターV10エンジン搭載車は、2008年から10年まで3年連続でルマン24時間に参戦していずれも完走、2009年には総合5位、2010年にはガソリンエンジン車としては最上位の総合4位(トップ3はアウディのディーゼルターボ)を獲得している。
そんな同社は、今回が初出展。EV開発に特化した新たなプロジェクトであるAIM NEV PROJECTの第1弾となるコンセプトカーである「AIM EV SPORT 01」を会場でアンベールした。
プレスカンファレンスに登壇した同社代表取締役の鈴木幸典氏は、「AIM EV SPORT 01」の開発の動機についてこう語った。 「ルマンで一定の成果を挙げた後、EV時代の到来を見据えて英国の企業とモーターを共同開発し、ロンドンバスに採用されました。その高性能モーターを使って、走行実験用のスポーツカーシャシーを開発したんです。今日のEVスポーツカーのように加速性能にこだわるのではなく、トルクベクトルを制御して走る楽しさ、曲ることを追求して」/p>
そのシャシープロジェクトが急転回を見せたのは昨年のこと。親交のある中村史郎氏(元日産自動車 専務執行役員 CCO、現SN DESIGN PLATFORM代表)とイギリスのグッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードに行ったところ、そこで見たEVのカッコよさにシビレて、「来年はEVシャシーにボディを被せて、自分もヒルクライムに出る!」と決意。かねてから「シャシーだけじゃもったいないからボディを載せよう」と言っていた中村氏にボディのデザインを依頼したのだという。
デザインを頼まれた中村氏によれば、「その前から『ボディを載せるならこんな感じ』というアイデアはあったけど、グッドウッドが6月で、実際にデザインを始めたのは7月。その後、グッドウッドの前に日本でお披露目すべくオートモビルカウンシルを照準に定めたので、実質的な作業期間は9カ月。じつは完成したのは昨日の昼で、なんとか間に合わせたんですよ(笑)」
中村氏いわく、鈴木氏がEVならでは加速性能にこだわらず運転の楽しさを追求したシャシーを作ったように、全長4m弱というコンパクトなカーボン製ボディも、EVにありがちな未来的な造形ではなく、あえてクラシックな形、オーセンティックなよさを素直に表現したとのこと。
「だからヘッドランプは吊り目じゃなくて丸目で、テールランプも丸い。ボディにエッジは1本も入っておらず、会場に並んでいる60年代のスポーツカーのように面だけで構成されています。最近はこういうピュアなデザインをする機会はめったにないんだけど、鈴木さんもこういう感じが好きなので実現できたんです」
ちなみに市販化については、鈴木氏は「それに関しては今後の検討事項ですが、これからもEVの可能性を広げるクルマの開発を進めていく方針で、第2弾も年内に発表予定です」と語った。それを受けて中村氏は「これが始まりで、私自身も今後の展開が楽しみ。それと同時に、オールジャパンでこういうものが作れることを、みなさんに知ってもらいたい」と言葉をつないだ。
展示車両
AIM EV SPORT 01