「トレンドを知った上で、最後は自分が本当に良いと直感で思うものを選びたい」

前回の神保さんから「友人のスタイリストがカッコイイワーゲンに乗っている」と教えてもらい伺ったのが今回のスタイリストの島田さん。〝フォルクスワーゲン・タイプ3〞に乗って2年。「車全体が好きというより、このデザインが好き」という彼は、スタイリストという職業も含め「自分が良いと思うもの、好きと思うもの」が明確。愛すべきタイプ3へのこだわりや、モノを選ぶということとは?について話を伺ってきた。

島田さんはファッションのスタイリストとして活躍されていますが、この職業を選んだきっかけは何でしょうか?

島田氏(以下島)「10代の頃、モッズや初期パンクが好きで、そのカルチャーにどっぷり浸かっていました。自分もバンドやったりクラブ行ったり。ファッションの学校に行く時に、将来チームでできる仕事をやりたいと思い、スタイリストを目指しました。大人になってから、スタイリスト&ファッションエディターのSHUN WATANABE氏のアシスタントになり、そこでモードを勉強して。今はハイファッションの流れを知りつつも自分なりのストリートの色を出せたらと思っています」

最近の活動としてアートなジンを制作されていますね。

島「僕とアートディレクターのYOSHIROTTEN、カメラマンの山谷佑介の3人で『CONTACT HIGH ZINE』というファッションとアートのジンを作っています。開いたらちょうどLP盤と同じ大きさになっていて、500部限定で販売しています」

では愛車のことについてですが、フォルクスワーゲン・タイプ3を選ばれたきっかけは何でしょうか?

島「元々はモッズが好きで150ccのモッズ使用のヴェスパに乗っていたのですが、仕事で車が必要になってきたので探していて、高級車ってのもピンと来ないし、ヴェスパのように自分の手でカスタマイズしていけるのがいいかな、と。そんな時に前回登場されている神保さんからこの車を紹介されて。これなら買いやすいし、パーツも沢山あるので修理もしやすい、と思いました。マニュアルは教習所以来、運転していなかったので、神保さんと一緒に新木場の工場地帯に行って練習しました(笑)」

荷物も沢山積めそうですね。職業柄、その辺もポイントでした?

島「はい、後ろのトランク部分が長いものがいいなと思っていて、あとこれ荷物がフロント部分にも載るんですよ。初めて見た時『え!ここにも乗るんだ!すごい便利かも』って思いました。服のリースで回っている時に荷物を前のトランクに入れておけば車の中でタバコを吸っても服に臭いが着かないので気を遣わずに吸えます。撮影の時は前に服を入れて、後ろにトランクとカバン、そしてまた服を入れて折り畳みのラックを入れまが、見た目より結構入るので使いやすいです」

運転席周りでカスタムしているのはどこでしょうか?

島「まずハンドルが元々黒だったのを白がカッコイイと思い変えました。様々なパーツがあるので、組み合わせていくのが好きです。オリジナルにこだわっている訳ではなく移動手段として乗れれば良いので、スイッチも新しくしたり、ハザード、シガーポケットも付けました。初めは何もついていなかったんですよ、シートベルトでさえ(笑)」

外装でカスタムしたところはありますか?

島「タイヤをホワイトリボンに変えてみたんですが、全然合わなくて(笑)。神保さんに変じゃないか見せにいったら、『ちょっと違和感ですね』って。でももう付けて走ってるから、それじゃあひっくり返しちゃおうってなって、車屋に行ってひっくり返しました。特に好きなのは、後ろのテール部分にフォルクスワーゲンって書いてあるところかな。後ろのフォルムが好きですね。前は丸いヘッドライトにバンパーが昔の車って感じで好きです」

クラシックカーの楽しさは何でしょうか?

島「コンピューターじゃないから直せるところがいいですよね。直せばいくらでも乗れる。そんなに機能はいらないと思いますね。音楽が聴けてちゃんと走ればそれでいいかなって思います。ナビも携帯のgoogleで充分だし、便利過ぎなくても気持ちよく乗れたらいいです」

壊れて大変だったエピソードは?

島「ワイパーが取れた事がありました(笑)。撮影のロケハンで千葉の方に行っていて、雨が降っていて公道を走っているときに、助手席のワイパーがぶっ飛んで(笑)。小さい道だったので飛んでいったワイパーを取りにいって、工具もその時には乗せていなかったので付けられなくて、でも助手席だからいいかってなっていたんですけど、帰りの高速道路ですごく雨が降ってきて、運転席側のワイパーも取れそうになって。ワイパー無いって本当に大事だなって思いました(笑)下道に降りてガソリンスタンドで工具借りて一先ず付けたんですけど、ネジ回し過ぎてパキーンといっちゃいました。後日、買い直して自分で付けました」

街を走っていてよくある事は?

島「信号待ちで、横にバイクがビーって付いて『いいね!タイプ3!』って言われて自分は『あーそうっすねー』みたいな事を言ったら『じゃー!』って(笑)。また、横におっちゃんがきて『いいねー!昔乗ってたんだよね!』とか。信号待ちの謎の感じありますね(笑)」

それでは車のカスタムも含めスタイリストという職業柄、モノ選びで大切にしている事は何でしょうか?

島「ファッションとかは極論でいうと好みだと思っているので、色々なスタイルがあって『どれが自分が好きか』という事なので、自分が好きになるかなれないかは自分の判断基準になるものような気がしてます。もちろん嫌いなモノも好きなモノあります。けどそれがあることが大事だし、仕事としてそれを伝えることが大事だと思います。コレクションをみて世界がどうなっているかっていうのを常に見ておく必要はありますが、それを知った上で、最後の選ぶところは自分の中の『これがいいっ』と思う直感が大事な気がします」

最後にクラシックカーの魅力とは?

島「やっぱりデザインだとは思います。例えば三角窓の構造もそうですけど、実は昔のものはミニマムで必要最低限のモノでデザインと機能が一体化していて。それって素敵だなと思います。小さいボディですが、元々バンみたいな形って業務用で荷物を運ぶことが1つの機能として備わってて、それで前にも荷物が乗せられますし、それがデザインとしても生きている。計算された美しさは今も遜色なくカッコイイですし。そこが素敵だなと思います」

photograph : Taku Amano
edit : Takafumi Matsushita