「私にとっては日常の足として楽しむもの。たまたま好きなデザインがヘリテージカーだっただけ」

ヘリテージカー・ラバーズも22回目。ここで初の女性が登場! 野口さんの愛車は『MG-B』の77年式で、日常の足として使用しているもの。23年間、不具合がおきては友人の助けもありながら修理し、大切に乗ってきた。「オリジナルにこだわってる訳ではなく、自分好みに仕上げています」という車は、背伸びをせずあくまで等身大のデザインでありながら、随所に自分らしさを散りばめている。

ヘリテージカーに興味をもったきっかけは何でしょうか?

野口氏(以下N)「中学生くらいの時に初めて街を走っているオープンカーを見たんですが、それがアルファロメオのスパイダーだったんですね。地元が山梨なんですけど、そこでたまたま見かけて。カッコいいなあと。それが強烈な記憶に残っていて、それと同じ年式くらいのオープンカーに興味を持ったんです」

興味を持ってからずっと乗りたいなと思っていらっしゃったんですか?

N「その時は興味はあったんですが、ただカッコいいなって思っていただけで乗りたいとは思っていなかったんです。で、いざ自分が車を買うってなった時に、初めて、せっかくお金を払って買うなら好きな車に乗りたいなと思いまして。ただ、実際には、そもそも手が届く車なのかもわからなかったですし、ちょっと古い車なので自分で維持していけるのかなどもわからなくて。それで、たまたまスパイダーが置いてあるかもしれないっていうクラシックカーのイベントがあって、行ってみたらMGが置いてありました。私、その時まではMGってブラックバンパーのイメージしかなかったんですが、メッキのバンパーがあることも知らなくて、それに驚いたんです。元々はスパイダーしか頭になかったんですけど、あ、こういうのもあるんだと。しかもその時に値段を見て、意外と手の届かない夢の車じゃないんだな、と気づいて。それがMGを買う大きなきっかけにはなりました」

その場で購入されたんですか?

N「いえ、その情報を得て一度考える時間を作りました。イベントでMGを見つけたのはそこに出展していたお店なんですけど、じゃあそこに行けばもっと詳しい情報が得られるかなと思って、その後お店に足を運んで。で、やっぱりそこで現物の車を間近で見ると欲しい気持ちも高まってきて、いよいよ本当に買おうかなという感じになりました」

なるほど。ではそのMG-Bに出会った時、どのような仕様だったのでしょうか?

N「これはイギリスの車で、私のは年式で言うとMGBの中では後期のものです。前期は今私の車になってるようなメッキのバンパーなんですが、77年式は本来だと黒いプラスティックのバンパーなんです。それを、もう少し古い年式のメッキのバンパーに改造しているんです。結構全体的に改造が入ってるんですけど、見た目としてはバンパーが一番大きいですかね」

そこから、ずっとお手入れしながら乗っていらっしゃるんですね。

N「はい、もう23年乗っています。やっぱり運転して楽しいです。元々日常の足としても使おうと思っていて、楽しさと日常使いと、両方の考えで買ったものです。実際運転してみたら意外と日常使いに困らないなと思いました。見た目だけでいくと『そんなに普段は使えないんでしょ?』と言われますが、実はそんなことはなくて。普段でも、この車でどこへでも行きますし、買い物しても荷物積めたりとか。日常使いも問題ないですね」

現行車と比べて不便な部分はありますか?

N「特にないですね。うち主人がマツダのRX-7に乗ってたり、他の車にも乗ってるんですけど個人的には普段使いにはMGの方が実は便利で。だから国産のスポーツカーよりは、私は案外利便性がいいなと思っています(笑)」

デザインについてお聞きしたいのですが、外装で気に入っているところはどこですか?

N「バンパーを変えているのと、後ろのテールランプとかそういった小物です。 バックランプが少しゴツめだったので、自分でいいなと思うものを探して変えたりしています。自分で気になるところを改造出来るのも楽しいです」

グリルバッジも珍しいですね?

N「多分、JAFで今もらえるのはシールになっていると思うんですけど…一部バッジみたいなのもあるのかもしないんですが、グリルにつけられるタイプではないらしくて。当時、せっかくだったらここに何かバッジをつけたいなと思っていて。JAFのバッジもつけたいなと思っていたんですけど、やっぱりなくて。車友達とその話をしていたら、その友人が家にあるんじゃないかな?って話になって。その友人のお父様が長年JAFに入っていたので、あったような気がすると。それで、実際に所有されていて、お父様が使わないということで有り難く譲って頂きました」

では、内装で気に入ってるところは?

N「シートと、フロアの絨毯を一度張り替えたのですが気に入っています。内装も元々は黒いビニールだったり黒いカーペットだったりしたんですが、古い年式のように変えてあります。全然オリジナルとか無視したことになっちゃうんですけど、自分の気に入った色を選んで張り替えたりしてます。オリジナルも凄くいいなと思いますが、その通りに再現するのは、自分ではなかなかできない。だったら、やれる範囲で自分の好みの空間にしようかなと思っていじっています」

不便だけれども好き、といった部分はありますか?

N「エアコンもついてないですし、現行車的な機能はあまりついていないんですけど、暑ければ暑いで屋根をあければいいし、みたいな。だから、ある意味季節感は極端ですね。夏はより暑く、冬はより寒く、みたいな(笑)。でも、それはそれで、季節を感じて楽しめるって感じですね」

この車での楽しい遊び方っていうのは?

N「オープンにして走ることですかね。あまりわざわざは行かないですが、山だったり、緑の中を走るのが気持ちいいです」

いつまで乗りたいという希望はありますか?

N「出来る限りですね。今のところ特に困ったところはないんですが、今後も色々とやっぱり不具合も出てくるので。そんな時は、この車のおかげでMG好きの知り合いが増えたので、ちょっとトラブルがあっても、そういう方達が教えてくれる安心感があります。そういうのが、長年乗れている要素かなって思っています」

仲間はどうやって増えていったのでしょうか?

N「私の場合は、車を買ったお店の影響が大きいかなと。 やっぱり何か修理などがあると、お店に行くわけですよね。そうすると、同じような車に乗っている方たちが集まっていたりして、そこで知り合うっていうのが多い気がします」

では最後に、あなたにとってヘリテージカーとは?

N「うーん…あまりそうやって考えたことはないんですけど、まあ一般的に見ればヘリテージカーなんですが、私にとっては日常の足であり、楽しむものであり、両方を兼ね備えているもので、あんまり特別なヘリテージカーって意識したことはないですね。たまたま気に入ったのがこの車だったという感じです」

Photograph:Taku Amano
Interview & Edit:TUNA
Text:Hina