「フィアット600にはイタリア人の平凡だけど大切な思い出が詰まっている」

庭園設計やガーデナーとして活動中のロベルト・マンツォリーニさん。趣味はキノコ狩りや釣り、そして庭いじり・・・。自然や植物を愛するがあまりそれを仕事にしてしまったのだとか。だが、趣味はそれだけではない。根っからの凝り性で趣味人のロベルト氏は、DIY、物を修理したりカスタマイズするなど、手作業で何かすることも大好き。そんなところから古い物やひいてはクラシックカーにも興味を持ち始めたというロベルト氏のこだわりぶりを伺った。

ガーデンアーティストとして活躍されていますが、そのきっかけは?

ロベルト(以下ロ)「私の住んでいるベルガモは山があって周りは自然に囲まれています。私も小さい頃からそんな環境で育ち、山や自然の中で遊ぶのが大好きでした。まあ、ここまでは他の子供と同じなのですが、私の場合、大人になっても家庭菜園、釣り、キノコ狩りなど自然にまつわる趣味にどんどんはまっていったんですよ。そんなところから好きが嵩じて仕事になっていきました」

でも自然vs車というのは一見相反する世界のモノのように思えますが、クラシックカーにはまったのはどうしてなのですか?

ロ「ガーデニングにおいて、囲いや装飾などを作ることにも通じているのですが、私は手仕事で何か作ったりするのも大好きなのですよ。仕事上、古木や不要品などを使って庭の装飾を作ったりすることもあり、ただの趣味としてモノを修理やカスタマイズすることもあるのですが、そういう古くなったものや不要になったものに触れているうちに、クラシックカーにも興味がわいてきたのでしょうね。だから私はクルマ好きというよりはクラシックカーが好きなんだと思います」

ではどうしてこのフィアット600を選んだのですか?

ロ「世界中で知名度の高い500に比べて、600はマイナーな感じがいいんですよ。とはいえ、イタリアでは大衆にとても愛されたクルマなのですけどね。これは1969年製ですが、1970年には製造中止になっているので、その歴史の終盤にできた一台です。でもすべてのパーツがオリジナルのままで、壊れることもなくちゃんと機能しています。エンジンもすぐかかりますし、走りも完璧。私は毎週の日曜にはこのクルマで必ずドライブします。このクルマのパーツで好きなのは丸くてかわいいヘッドライト、そしてシンプルなデザインのドアの内側部分。最近、ドアだけが売りに出ていたので、それを手に入れてガレージに飾っています」

周りの人の反応はどうですか?

ロ「このクルマを見るとみんなが微笑みますね。おじいちゃんのクルマを思い出すんでしょう。決してお金持ちのためのクルマではありませんから、みんなが振り返ってうっとりするということは絶対ありませんが(笑)、イタリアの一般大衆にとっては思い出が詰まった車なんですよ」

ではあなたにとってのこのクルマとの特別な思い出はありますか?

ロ「一番心に残っているのは、このクルマに乗って親友の結婚式のドライバーをしたことですね。イタリアのウエディングは、式は教会で挙げ、その後パーティ会場までみんなが移動するのが一般的です。そしてその時には新郎新婦を運ぶクルマにはクラシックカーとか特別なクルマを使うことが多いのですが、その晴れ舞台の大役を私の600がやりました。これは私にとっても大切な思い出で、結婚式の招待状を今でも大切に残してあります」

では、ずばり、クラシックカーの魅力は何ですか?

ロ「クラシックカーに乗り込んだ時の香りですね。昔のクルマと言うのは時がたてばたつほど魅力を増すと思います・・・それは新しかった頃にはなかったまた独特の魅力なんですが、それを一番感じさせてくれるのがこの香りなんですよね」

次にクラシックカーを買うとしたら何を選びますか?

ロ「次に別の車を買うとしてもやはりフィアット600がいいですね。今度はカブリオレタイプのジャルディニエラが欲しいです」

Photograph: Stefano Triulzi
Interview & Text: Miki Tanaka
Edit: Takafumi Matsushita