「知らない土地行って、一晩中駐車場とかに停めておくと『かわいそうだな』とか思っちゃいます(笑)」

写真、動画、スタイリングetc…。様々なものを作りあげるクリエイターteppeiさんの愛車は、79年式の「フォルクスワーゲン タイプ2」。屋号でもある「BLUE BUS HERITAGE」はここに由来しています。古着やヴィンテージが好きで、プライベートではサーフィンをこよなく愛し、仲間と月2〜3回はこの車で海まででかけるのだそう。「何と言ってもこの正面からのかわいい顔が好きですね。もう夜、遊びに行って車をどこか駐車場にとめていたら、寂しくないかなって思うくらい(笑)」。愛車のことはもちろん、ライフスタイルや人生観も自分らしさを追求する、teppeiさんにお話を伺ってきました。

teppeiさんは映像をはじめとして幅広くものづくりをされています。どのような制作をされていますでしょうか?

teppeiさん(以下t)「写真、動画、デザイン、…色々やっています。サーフィンやっているので、サーフ感があるものは特に得意ですね。昔からモードとかより、ちょっと抜けている感じ、ナチュラルで自然な感じが好きですね」

どのような経緯で現在のクリエイターになられたのでしょうか?

t「東京の蒲田出身で、このあたりは肉体労働の街なんです。小さい頃から、映画の予告の映像がとても好きで、そういうものを作りたいなと思っていたのですが、高校卒業したくらいの頃はクリエイターなんて無理だろうなあってことで、僕も地元で肉体労働やっていました。ただ、やっていく中で…『あれ、このままいったら自分がやりたいことを何もやらずに終わってしまう…』と思って。それでお金をためて専門学校に行きました。学校卒業してから、しばらくふらふらしていたのですが、同級生がミュージシャンになったりして、イベントのPVやフライヤーをタダで作ってあげたりして。それを見た人で『俺も頼みたい』、『じゃあ5万でいいよ』って感じで。そこがスタートですね」

ミュージックカルチャーでの制作が始まりなんですね?

t「はい。そのあとレゲエ周辺の人たちと仲良くなって。特に、20代の頃にボブマーリーとかのツアーを一緒にまわっていたおじさんがいて、その人と一緒にぷらぷらしていて。その方は映像作家で、ラスタファリズムなどの考え方も教えてもらったりして。そこからですね、様々なカルチャーの良さを知ったのは。あと『生きる上で重要なのはバランスだ』ってよくその人が言ってて。20代はそういうことを教わって、日本中のラスタマンの映像を撮ったりとか。そのおじさん、今70歳くらいなんですが、最近オランダにいて、やりたいことがあるから手伝って欲しいと言われて。凄く元気で、これからまだやりたいことが沢山あるんだって言ってて、そういう生き方ってカッコイイなと思います」

なるほど。濃いですね。様々なものを作られる理由もその辺りの考え方にあるのでしょうか?

t「そこも含めてなんですが、サーフィンやっていたり、その他様々経験した中で、今の自分の基本精神として『不安でやらないより、とにかくやっちゃえ』というのがあります。サーフィンにも『Go for it』という言葉を大切にする風習があって、とにかく波に突っ込まないと乗れないじゃないですか、突き進んで行かないと。それも人生に当てはめて動いてますね」

では愛車についてお聞きしていきたいと思います。ヘリテージカーを好きになったのはいつ頃でしょうか?

t「小学校3年生くらいですね。映画が凄く好きでアメリカ映画とか海外ものを見ていて、その中に出てくる車に憧れて。『アメリカン・グラフィティー』とか。’40s、’50sの映画が好きでマッスルカーやホットロッドの車が好きでした、小さい頃ですね」

オールディーズの雰囲気が好きなのでしょうか? ファッションもヴィンテージや古着を着ていらっしゃいますね?

t「やっぱり手作りに近いのと、大量生産じゃないから可愛らしいラインしてるじゃないですか。車もだから可愛らしいの好きで。なんかその手作り感が好きでなんですよね。でも、この車でこのファッションで海に行くと、たまにハマりすぎて恥ずかしい時とかありますけどね。ヴィンテージの服着て、これ乗って海来てるよって。今時ドラマでもその演出しないですからね(笑)」

フォルクスワーゲン タイプ2も映画の影響でしょうか?

t「それもありますね。『リトル・ミス・サンシャイン』っていう映画がありましたが、これと同じ車種の黄色で、家族で旅していく映画なんですけど、それ見て欲しいなって思ってて。サーフィン好きなので海にもサーフボードを積んで行けるしと思って買いました。サーフィンは18歳くらいからやってて、本気でやりはじめたのは20代後半くらいから。今は月に2〜3回くらい、この車に友人とボードをのせて行きます。千葉が多いですね」

サーフィンに行く時など、この車でどんな音楽を聞くのが好きですか?

t「音楽自体は何でも好きです。でも、60年代のロックやブルースをかけるのが多いですね。例えばジミヘンとか気持ちいいですね」

デザインで特に好きなのはどこでしょうか?

t「外見ですかね。今曲線で可愛い車ってそんなにないじゃないですか。特に顔かな?今の車って、それが全然面白くなくて、性格がない顔してるように見えます。見てて性格がありそうな…『カーズ』っていう映画あるじゃないですか、あんな感じで観れる車が好きだったから」

あとヘリテージカーで好きな部分は何でしょうか?

t「やっぱり壊れたりする方が面白いと思っていて。なんかかわいい。それを直して乗ってってやると愛着がすごいですよね。本当に相棒みたいな感じで乗れる。たまにレンタカーとかで借りるんですけど普通の車、って…車っすね。ただの、移動する手段でしかない。これもうなんか友達みたいな感じで。たまに知らない土地行って一晩中駐車場とかに停めておくと『かわいそうだな』とか思っちゃいます。『寂しがってるんじゃないかなー』とか(笑)」

では、内装についてこだわっている部分は?

t「今後、シートをデニムにしたり、色々いじろうとしてるんですけど、今内装でそんなにこだわりないですね。ただ板つめるって言うくらい。今日3本ですけどこの間まで7,8本積んでましたよ。便利ですよね。あと好きなのはスピードが出ないのでいちいち焦んなくていいですよね。どうせ出ないから。抜かれても『はいどうぞー』みたいな、しかも抜かれる時笑われますからね。『そりゃそうだな』みたいな。なので落ち着きが出ますね」

乗り心地はいかがでしょうか?

t「いや、もう気にしたことないです。でも、乗ってる感はすごいですね。今それがいい。眠くならないです、長距離移動でも。この車、エアコンがついていなくて、夏場は窓全開で、今の車からするともう全部不便。でもでもそこがいいですよね、手間かかったりする方がやっぱりいいです。例えば、携帯電話とかない頃の方が人と人の気持ちとかもっと深かったと思うんです。想像したり、今何してるんだろうとか。だから便利が全てではないとずっと思ってるんです。人をダメにしますよね」

なるほど。では、乗っていて周りの反応はいかがでしょうか?

t「子供達がすごい手を振ってくるんですよ、商店街とか走ってると。最初は振り返してたんですが、もう恥ずかしくなっちゃって(笑)。あと同じ車に道で遭遇すると、また手を振ってきます。『よう!兄弟』みたいな」

では、この車で遠出したいところはどこでしょうか?

t「これまではサーフィンで東京から鹿島くらいまでなんですが、波乗りに宮崎県くらいまで行きたいですね。もともと、ロードムービーとか好きなので憧れています」

では理想で、この車はいつまで乗りたいですか?

t「死ぬまで。できれば孫まで乗って欲しいなと思います。それを社名にしようと思って『ブルーバス』と言いますが、ヘリテージ、遺産だったり、その思いを付けたくて。だからそれまで俺は仕事頑張って稼いで行かなきゃダメなんですよ。こいつ手放さないように仕事頑張ろう!って思っています」

最後に、今の若い世代でヘリテージカーは、カッコイイけど故障が心配という方がいらっしゃいますが、アドバイスお願いします。

t「車に限らずですが、もうそんなのは起きた時に考えればいい。『こうなったらどうしよう』なんて考えなくていい。起きたらそんとき考えろ、と言いたいです。その分様々なことがありますけど、その生き方だと。でも、それがやっぱ楽しいんですよね。壊れるから楽しいし。例えば夕日が沈まずいたら誰も綺麗だって思わないし、桜も1年中咲いてたらいいなって思わないじゃないですか。そんな感じです、ヘリテージカーも。いつか壊れるかもしれないと思ってるから、思い出が美しいみたいなことですよね。だから買った方がいいと思います。でも、誰かが乗っててカッコイイとかじゃなく、もう絶対欲しいと自分自身が思ったら、やっぱり買うものじゃないですかね?」

photograph : Taku Amano
Edit & Interview:Tuna