「人との繋がりが一番面白い、だからこそ大切にしたい」
スタイリストの庄さんにご紹介して頂いたのは、同じ師匠の元アシスタント時代を一緒にした来田拓也さん。主にファッション雑誌を中心にカタログ、俳優のスタイリングなど多岐に渡って活躍されている。「周りの環境から車が好きになった」という彼が選んだのは、上品さが溢れる『ベンツW320TE』。ヘリテージカーに対する思い、さらには仕事に対する思いを伺ってきた。
スタイリストになるきっかけになったエピソードを教えてください
来田氏(以下来)「10代後半の頃、悩むことが多くて、将来の仕事にも不安を感じていました。そんな時、元々シルバーアクセサリーがすごく好きで、足立区にある有名なシルバー屋さんに『働かせてください!』と飛び込みで行ったのがきっかけ。たまたま店長がスタイリストだったので、どんな仕事なんだろうと調べていくとかっこいいスタイリストがいて興味を持ちました。元々洋服も好きだったので、できるならやりたいと思いました」
アシスタント時代に学んだことを教えてください
来「社会的な常識とか、洋服の知識からファッション業界のことまで全部のことを学びました。師匠が仕事に対してストイックな方だったので、精神面で学ぶことが多かったです。様々な人と知り合ってコネクションを作って、そこから人との関わりでやっていく仕事なので、人との繋がりが重要だと教わりました」
今お仕事で大切にしていることは何でしょうか?
来「スタイリストの仕事はクライアントさんがいて成り立つ仕事なので、そこに制約があって、その中でいかに自分の色を出すかってところをこだわりたいなって思います。クライアントさん、タレントさん、ブランドさん、編集スタッフの方達が喜んでくれることが一番のやりがいです。忙しくなってきたからって色々疎かにしちゃいけないんだなって常々思います。自分の好きなことで飯を食っていくのは大変だけど、自分のやりたい仕事は見えてきた部分があるので、またこれから色々進んで行きたいです」
それでは、ヘリテージカーに関しまして興味を持ったのはいつ頃からでしょうか?
来「10代の時にローライダーとかアメ車が流行っていて、その時にキャデラックのブロアム、リンカーンのタウンカーとかに興味がありました。それが17〜18歳。そのあとに免許を取ってからグロリアのワゴンを買って、それにずっと乗っていました。それも90年代の車だったのですが、この年代の車はカクカクしているのが残っている時代。さらに故障も少なく、街でも乗れる車でした」
では、車を乗り換えた理由は何でしょうか?
来「グロリアワゴンに10年以上乗って30万km走りました。2年前に事故をしてしまって、それが全壊で、車を買い替えることになりました。一時停止の白線が消えているのに気づかなくて、横からベンツに突っ込まれました。アシスタント時代の18歳からずっと乗っていた思い出深い車が一瞬にベンツに潰されましたね。そして今はベンツに乗っているっていう(笑)。何か縁がありますね」
なるほど。では、この車を選んだポイントを教えてください。
来「職業柄荷物が積めるものじゃないといけないので、ステーションワゴンがいいなと思っていて、これの前の形のW124っていう車種があって、丸めのクラシックベンツ。それが凄くかっこいいなって思っていて、でもさすがに仕事では使えない車だったので、この車を見つけた時に悩みました。ベンツW320TEは、うしろのフォルムがすごく好きで、見ているうちにどんどん欲しくなっていきました」
乗り心地はいかがでしょうか?
来「いいですね。重厚感があって、アクセルを踏むとすぐに反応します。冬は寒くても車内はすぐに暖まるので、機密性かも高いですね。この年代のベンツがなんでも付ければいいという時代だったらしく、92、3年のこの形のシリーズは装備が整っていますね。逆に無駄に多い感じもしますけど(笑)。現行車に年代が近い分乗りやすいですよ。ちょうど旧車と現行車の橋渡し的な位置になりますね」
では不便だけど愛しているところを教えてください
来「全体ですね。前の車と比べてすごく気を遣うようになって、ギアもちゃんと止めて入れるようになりました。窓も落ちやすいので、中途半端に窓を開けていると落ちやすくなるんですよ。だから開けるか閉めるかどっちかで、あまり窓を中途半端に開けなくなりました。ただ、壊れやすい方がだんだんと愛着が湧いてきますね。あとミラーが畳めないのが不便ですね。畳めないから立体駐車場に入れない…でもそこも含めて可愛くて気に入っています」
では、最後にヘリテージカーの魅力とは?
来「やっぱりデザインじゃないですか。今は丸いものがほとんどですからね。四角い車が好きですね。あとは今の車は全てがコンピュータ制御されていますよね。便利だとは思うんですけど、古い車のアナログな部分が好きですね。この車はアナログではない部分とアナログな部分がちょうど良い割合で、カッコ良さと機能性が備わっていて、愛してますね」
photograph : Taku Amano
Edit & Interview:Tuna