2023年から3回目の出展となる三菱自動車工業。今回のテーマは「時代を切り拓いてきた名車たち」で、出展6台のうち4台がヘリテージカーだった。古いほうから紹介すると、1964年発売の初代「デボネア」。元GMのデザイナーだったハンス・S・ブレッツナーの作品で、とても5ナンバーサイズに収まっているとは思えない大きく、立派に見えるデザインが特徴で、パワーステアリングやパワーウィンドウといった快適装備も早い時期から備えていた。1970年デビューの「コルト・ギャランGTO」は、アメリカン・マッスルカーに通じる大胆なスタイリングと高性能なサターンエンジンで人気を博した。1976年に発売された「ギャランΛ(ラムダ」は落ち着いた大人のムードのスペシャルティカー。1990年に登場した「ディアマンテ」は、税制改定によって3ナンバー車の不利益が少なくなった時流ともマッチしてヒットした高級サルーンである。

これら斬新なデザインや画期的なコンセプトで、当時の自動車市場に新風を吹きこんだ4台の隣には、今回の日本車メーカー共通企画である「過去が見た未来」のもとに、1989年の第28回東京モーターショーに出展された「HSR-II」が並べられた。「HSR-II」はフルタイム4WDをはじめ4輪ABS、4輪操舵といった四輪制御技術、そして追尾走行や自動車庫入れ機能などの運転支援技術といった当時は研究段階にあったテクノロジーを採用したコンセプトカーである。

そして6台目の出展車両は、最新の電動化技術と四輪制御技術を導入した現行のフラッグシップモデルである「アウトランダー」というラインナップだった。

それら6台が並ぶブースでプレスカンファレンスに登壇したのは、元F1ドライバーにして現在は三菱のブランドアンバサダーを務める片山右京氏と、チーム三菱ラリーアートの総監督である増岡 浩氏。片山氏は「アウトランダーPHEVに乗っているが、モードの選択によって元F1ドライバーの腕を持ってしても曲がれないと思っていた雪上コースを易々と曲がってしまうコーナリング性能、そしてゲリラ豪雨の高速道路でも不安のない走行安定性を持つS-AWC(Super All Wheel Control)に感銘を受けた」と告白。「それを可能にした三菱独自の四輪制御技術の一部が、36年前のHSR-IIですでに採用されていたことに驚いた」と続けた。

それを受けて増岡氏が、「HSR-IIのコンセプトは、ドライバーの技量に関係なく安心して安全に運転できるクルマだった。4WDが悪路走破性のみならず高速安定性や操縦性などに関わる重要な技術と認識した三菱は、ダカールラリーやWRCなどの競技も通じて、普通のドライバーがいかなる状況下でも安心して安全に走ることができるように四輪制御技術を磨いてきた」と返すと、片山氏はその一貫性にいたく感心していた。