ヤナセクラシックカーセンター
メルセデス・ベンツ、アウディ、フォルクスワーゲンなどの代理店として100年以上の長い歴史を持つ株式会社ヤナセ。その中でもヘリテージカーを専門として、整備・レストレーション・販売を行うのが「ヤナセクラシックカーセンター」だ。長年に渡り培われてきた経験や、蓄積された技術・文献に加え、ヘリテージカーに精通した国内外の取引先などのノウハウ・部品調達力を活用。日本に残されたヘリテージカーを可能な限り後世に残していきたいという想いの元、「乗って楽しむヘリテージカー」の提供を行っている。取り扱うのはメルセデス・ベンツを中心として、幅広い年代でヤナセが当時輸入・販売を行ってきたヘリテージカー。今回は1993年式 MERCEDES・BENZ 500SLや、1992年式 MERCEDES・BENZ 500Eが展示された。


今回展示されたの5台の内4台が委託販売となるが、いずれも長年ヤナセにてメインテナンスがされていたハイクオリティな車輛ばかり。もちろん、いずれの個体も細かな交換歴などが記されたメインテナンスカルテで管理されている。ヘリテージカーにありがちな低走行・車庫保管で状態良好と唄われた個体ではなく、的確なメインテナンスと共にしっかりと距離を重ねてきた、生きている個体達だ。1992年式 MERCEDES・BENZ 500E (W124)のトリップメーターは10万キロを指しているが、エンジン・ミッション周りやマウント等はしっかりと手が入れられ、走りの質は担保されているのだとか。この個体も委託販売となるが、オーナーはこの魅力を分かってくれる若者に託したいという想いから、人気の500Eの相場を考えると格安なプライスで出展がされている。1993年式 MERCEDES・BENZ 500SL(W129)は右ハンドルが希少な一台。歴代の出展車両の中でも最も綿密なメインテナンスとケアを受けてきており、オーナーの深い愛情が垣間見える個体なのだとか。「ヘリテージカーを修理し、後世に遺していくためにも10年後、20年後も走って楽しめるクルマを提供し続けたい」と想いを語って頂いた。
ヤナセクラシックカーセンター URL: https://yanase-classic.com/
The ALVIS Car Company
「今もなお、本物のクルマを造り続けている――」ALVISは1919年に英国コヴェントリーで創業し、数々のパーソナルカーを世に送り出し1967年に量産車の製造を停止。以降は既存オーナーのために部品の製造とALVIS車の修復を手掛けていたが、2017年に「コンティニュエーション・シリーズ」を限定生産・販売する事を発表し、20世紀の車輛を「新車で」生産・販売を行っているメーカーだ。「コンティニュエーション・シリーズ」とは、過去のオリジナルのデザインを再現し、当時のシャシー・ナンバーとエンジン・ナンバーを現代に引き継いで生産される特別なモデル。ALVISは、1953年から1963年までは当時の明治産業の関連会社である明治モータースが輸入販売を行っていた。2018年に明治産業は創業85年の周年を機に再びALVISと総代理店契約を締結、日本での輸入販売と保守業務を展開することとなり、今回は計3台のコンティニュエーション・シリーズが出展された。


2020年に上陸した日本第1号車となる「4.3リッター・ヴァンデン・プラ・ツアラー」はALVISにとって3台目のコンティニュエーション・モデルである。当時コーチ・ワーカーとしてヴァンデン・プラ社に架装されていたボディーワークは一切のデータが残っておらず、再現は難航。ALVIS社が所有していた1937年式ヴァンデン・プラ・ツアラーから3Dデータ化する事で、当時の工法を再現する形で現代に蘇った一台である。シャーシナンバーは1937年に英国で150台分の認証を受けており、未使用の77台分の番号を使用して製造がされる予定だ。
The ALVIS Car Company URL: https://thealviscarcompany.jp/
ブリストル研究所
イギリスの航空機製造会社を母体として、第二次世界大戦後に産まれたブリストル。ヘリテージロールスロイス・ベントレーを専門とする「ワクイミュージアム」創業者の涌井清春氏によって研究所と銘打たれ、創設されたスペシャルショップが〝ブリストル研究所〟である。日本国内では未知の存在に等しく、ブリストル本国・英国以外では唯一と思われる専門店として、お客様と共にブリストルというブランド、およびそのクルマ達を研究しながら日本に広めていく事が唯一最大の目的と掲げられている。




「ブリストル航空機製造会社」の三代目当主、ジョージ.S.M.ホワイト卿による、個人プロジェクトに近いかたちの事業計画から生まれたブリストル・カーズは、航空機の技術を活かした「小さなベントレー」を目標としたクルマ作りを戦前のBMWで名を馳せた設計者、フリッツ・フィードラー氏と取り組む事となる。ブリストル初の自動車として世の中に送り出された「ブリストル400」を始めとする各モデルは、航空機生産に端を発する高度な技術や設計が散見されるという。今回展示されたのはファーストモデルであるブリストル400から、本研究所開設のきっかけとなったブリストル406台など計4台が展示された。
ブリストル研究所 URL: https://www.mk-wakui.com/
MATSUSHIMA CLASSIC CAR
京都を中心に、滋賀、大阪、奈良、広島で、輸入車・国産車あわせて10ブランドの正規販売店を運営する〝マツシマホールディングス〟。その歴史は古く、創業は1955年。マツダ・京都販売店を起源とし、取り扱うブランドはMercedes-Benz、smart、Volkswagen、Audi、BMW、MINI、Suzuki、Maserati、PORSCHEの10ブランドに及んでいる。掲げるコーポレートメッセージは「クルマを、文化に。」自動車関連の他にもスポーツやアート、観光、食といったライフスタイルにまつわる事業も幅広く展開されている。伝統、芸術、暮らしなど、 古いものと新しいものが共存する「文化のまち・京都」において、クルマと生活に纏わる文化との融合による多彩な体験と感動を提供する事がマツシマ・ホールディングスの本懐とされている。




マツシマホールディングスのクラシックカー事業「MATSUSHIMA CLASSIC CAR」では、マツシマホールディングスの創業70周年を記念して、同じく70周年を迎えるメルセデス・ベンツのSLクラスに向けて「Celebrating 70 Years – Happy Anniversary, Mercedes-Benz SL!」(70周年 おめでとう メルセデス ベンツSL!)をテーマに、名車の歴史でも印象的な3台のモデルを展示。メルセデス・ベンツとSLがどのように進化し、70年の歴史を歩んできたのか、SLの真の魅力に迫る展示が行われた。
MATSUSHIMA CLASSIC CAR URL: https://matsushima-hd.co.jp/
DUPRO
埼玉県所沢市に拠点を構える「DUPRO」。ヘリテージカー専門店ではあるものの、取り扱う車両のほとんどが通称バーンファインド、不動車起こしが専門となるスペシャルショップだ。オーナーの渡辺氏は、19歳の頃から独学で不動車起こしを続けている筋金入り。その門を叩く若者も少なくなく、多くの若い仲間が集った事から一年程前から本格的に事業としての活動をスタート。商売ありきではなく、情熱をもってレストレーションに取り組む渡辺氏の下には独自のネットワークから多くのクルマが集まり、国内外・年式を問わず様々な不動車を起こし続けている。




今回展示された衝撃の一台はこちら。「1990年式 NISSAN MARCH R」千葉県の納屋で発見され、車体の埃や汚れを発見されたままの状態を維持している個体だ。このマーチR、930ccのエンジンにターボとスーパーチャージャーを組み合わせてラリー競技用ベースとして販売された車両。そのためほとんどオーナーが純正の鉄ホイールや、純正シートなどを換装してしまう中、フルオプションを装着した上で全てオリジナルの状態で保管されていたのだ。メインテナンスの上走らせて楽しむもよし、あえてこのままの状態を保ちコレクションとして慈しむのも良いだろう。
DUPRO URL: https://www.dupro-japan.com/
Mars Inc.
東京都練馬区にショールームを構えるネオヘリテージカー販売店〝Mars Inc.〟アストンマーチン・ベントレーなどの希少な車種を得意し、ヘリテージカーからエッジの効いた現行車まで幅広く販売を行っている。緑の芝生と白い壁、デザイナー家具に囲まれたショールームでは希少なクルマがズラリ。新規の購入相談は勿論、そのあとの乗り換えを見据えた相談もじっくりと提案可能なショップだ。




今回展示されたのは選りすぐりの4台。その中でも異質の存在感を放つのが「1987年式 Rolls-Royce Camargue」戦後初めてロールス・ロイス社が社外にデザインを委託したモデルである。ロールス・ロイス唯一となったピニンファリーナ・デザインのボディを持つこの大型2ドアクーペは、当時としては最も高価な市販乗用車として販売され、世界に送り出されたのは僅か500台前後。日本に輸入されたのもごく少数だが、この個体は驚きの走行距離2,700kmというコンディションに、入荷後600万円以上の重整備を施されたまたとない一台に仕上がっているという。
Mars Inc. URL: https://www.mars–inc.jp/
photograph: Ryousuke Doi
edit & interview: Chihiro Watanabe